近年の新入社員の特徴は、協調性が際立って高いことだ。当社では、人材育成や組織開発に関するアナリストレポートを作成している。その中で新入社員に関するものをご紹介しよう。

2011年度の新入社員は、「集団生活への取り組み姿勢は積極的」という項目が83.3%と高く、前年度より2.7%上昇している。当社では新人教育研修を行っているが、これは講師などへのアンケート調査の結果だ。

私も年に70~80回ほど研修の講師を務めているが、やはり協調性があり、素直という印象を持つ。見た目もきちんと整えており、自分たちがどう見られているかを強く意識しているように思う。「空気を読む」能力も高い。

その半面、周囲に合わせる傾向が強く、主体的にチームを引っ張ろうという意識に欠ける。11年度の新入社員への調査でも、「型から外れることへの恐怖がある」という回答が60%と、前年度より11%も高かった。「間違えを気にせず、とにかくやってみる」も50%で、前年度より10%ダウンしている。この背景には、08年のリーマンショック以後の就職難が、学生を保守的にさせている側面があると思われる。

今年の新入社員も、ほぼ同じような傾向にあると予想される。4月に入社予定の内定者に対して行った調査によると、3年後にどうなっていたいかという質問に対し、1位は「会社から役に立っていると思われている」という何とも消極的な回答だった。

こうした新入社員を指導するに当たり大事なことは何か。

まず、頭ごなしに怒鳴りつけてはいけない。強く叱責してしまうと、今度は叱責されないことが目的になり、上司がいないところでは仕事をしない社員になってしまう可能性があるからだ。強みを見つけて尊重してあげよう。

絶対やってはいけないのは、「ゆとり世代」という言葉を使うことだ。本人たちは個性を大事にする世代だと思っているので、一括りにされることを嫌う。そもそも、「あいつはゆとり世代だから」と考えるのは、指導する側も思考停止している証拠だ。

大事なのは信頼関係である。正論だけでなく、ときにはホンネで話す。そうすれば、次第に心を開いてくれるだろう。

(構成=田中裕康)