最初は「カイロ」の技術を使おうとしていたが熱すぎて…

一方で、市場にはベンチマークとすべき商品が見当たらない。しかも眠りに就く前の一定時間、ある程度安定した温度で耳周辺を温めるとなると、発熱体の形状や発熱時間がネックになったとのこと。

北口さん
写真提供=小林製薬

まず難しかったのが、形状。同社は「カイロ」の技術を有していたため、当初は耳全体にカイロをあてがう構造を考えたものの、どうしても熱くなりすぎる。

そこで今度は、“耳のくぼみ”に注目し、「耳栓+発熱体」の発想に至ったと言います。

「でもそうなると、発熱体をかなり小型化する必要がある。しかも耳のくぼみの大きさや形状は、人それぞれ。どんな形にすれば耳にフィットするのか、その解を得るまでに、思考錯誤を繰り返しました」(北口さん)

従業員100人の耳のサイズをメジャーで計測

具体的には、社内で働く従業員約100人の耳を、ひたすらメジャーで測って平均値を出す。

また発熱体を取り付ける(耳のくぼみに入れる)耳栓自体も、樹脂が分厚いと熱が伝わりにくいため、素材や薄さの追求が課題に。3Dプリンタや簡易金型を使って約20回、「作ってはやり直し」を続けたそう。

さらに「どのぐらいの温度で、何分ぐらい温めるか」についても、トライアル&エラーを繰り返したとのこと。

「耳のくぼみに装着したとき、最も心地よい温度とは何度なのか。0.1度刻みで温度を変えては試す、という地道な作業でした」

当初は10分持たずに冷めてしまったため、発熱体を構成する水や鉄分などの含有量を少しずつ調整しながら、なんとか20分程度持続するものを探り出していったそう。

完成までにつくった試作品は、実に約50点。その間並行して進んでいたのが、小林製薬ならではの“アノ”議論、商品名をどうするかです。