働いても収入が増えにくい日本では、資産運用でお金を増やすことが重要になっている。運用で失敗しないための最良の方法が、長期的な視点に基づく国際分散投資だ。

日本人はだんだん
貧乏になっている

FPアソシエイツ&コンサルティング代表
Takashi Kambe
神戸孝●かんべたかし
1956年埼玉県生まれ。80年早稲田大学法学部を卒業し、三菱銀行に入行。87年に日興証券に入社。
以後、ファイナンシャル・プランニングサービスを中心とした企画・開発に携わる。99年FPアソシエイツ&コンサルティングを設立。『ほんとうに真っ当な資産運用』など著書多数。

世界的な市場の波乱を経験して、「もう資産運用なんてやめようか」と思っている人も多いかもしれません。でも日本人にとって、資産運用の重要性は今まで以上に増しています。

その理由はまず、日本人の収入がだんだん減っていること。昨年、日本のGDPは中国に抜かれましたが、「中国の人口は日本の10倍だから」と、気にしなかった人も多いはずです。ところが、収入に直結する一人当たりのGDPの順位はすでに下がっていて、1993年には世界3位だったものが2010年には世界16位。もう一流国の座からすべり落ちているといってもいい。

公的債務もGDP比約200%で、世界で断然ワーストワン。実態はギリシャより厳しいのですが、大騒ぎにならないのは、国債がまだ国内で消化できているから。でも、その国債を買い支えている個人金融資産にも限界がある。今はまだ純個人金融資産が公的債務を100兆円ほど上回っていますが、最近のペースだと、あと5~10年で逆転すると考えられます。

つまり、ギリシャ問題は人ごとじゃない。みんなが貧乏で、働いても収入が増えにくい国になりつつあることに、そろそろ気づかないといけません。

昔ならもらえたはずのボーナスや退職金、年金にはもう期待しにくい。身体や脳みそを使って働いても収入が増えにくい以上、「お金に働いてもらう」ことを考えないといけません。

もう一つ、マーケットと経済の関係が変化していることもあります。

87年のブラック・マンデーの際、株式市場の暴落は一般の人にはほとんど影響しなかった。それは、実態経済の問題につながらなかったからです。ところが近年は、サブプライムローン問題が起きると日本の企業が潰れたり、就職難でみんなが影響を受けてしまう。金融マーケットの変調が実態経済を動かす時代になってしまったのですね。

だからこそ、特に日本人には資産運用が必要。運用しないでいると、マーケットがいいときにはほとんどメリットなし、マーケットが悪いときだけダメージを受けてしまいかねません。