ドイツは、日本の約4倍の太陽光発電導入量で、世界ダントツ1位。(出典:IEAの資料を基に編集部で作成)

ドイツの脱原発は成功し、再生可能エネルギー国家に変身できるのか? その成功が、今回の取材で断言できるかといえば、難しい。ただし、ドイツの全国民が、100%原発に後戻りしない「脱原発」という同じベクトルで意識を共有化させ、「再生可能エネルギー」に懸けるという戦略ははっきりわかった。そして、自国の持つ高度な技術開発力に大きな自信と期待を寄せているということだ。

そして、繰り返しになるが、今回の脱原発の最も大きな要因は、戦後の冷戦構造下から続く核の恐怖と、チェルノブイリ原発事故による「原発ノー」の国民の強い意志が政府を動かしたという事実だ。そして前出の原子力の広報関係者、官僚や政治家など、もともと原発推進派だった人でも、国民の多数決で決まったことには従うという「大人の対応」ができる国だということもわかった。

だが、楽観視ばかりもできない。経済環境の悪化により、今後のエネルギー政策に黄色信号が灯る可能性がある。ギリシャ、イタリアの国家債務危機のほか、フランスの国債の格付けが下がる事態も発生している。欧州最強と称される財政を誇るドイツも、EU諸国の財務状況悪化とは無縁ではないからだ。現状の再生可能エネルギーの補助金制度を維持し続けられるのか、その保証はない。

ドイツは、日本の12倍以上の風力発電導入量を誇り、世界第3位である。(出典:Global Wind 2009 Reportの資料を基に編集部で作成)

しかしながら「脱原発」は攻めの決断だったとの解釈も可能だ。11年度実施したフランスの調査で、国民の8割が「原発の縮小」を訴えている。12年5月に行われる大統領選挙で原発推進派のサルコジ氏が「原発の縮小派」のオランド氏に敗れれば、エネルギーの8割を原子力に頼るフランスもエネルギー政策の転換を迫られる。

すでにイタリア、スイスが原発廃止を決め、新しいエネルギー産業の育成を模索する中、ドイツは、再生可能エネルギーを売りにした新しい「エネルギー盟主国」に変貌できる可能性もあるのだ。ドイツの事例が成功するか、絵に描いた餅で終わるのか、世界がドイツを「ベンチマーク」している。

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=渡邉 崇)