顧客から「○○の資料を見せてほしい」と言われたときに、言われたからとりあえず用意するのか、それともチャンスと思うか。デキる営業マンは当然後者で、顧客の一言に込められた期待を察知し、小さなきっかけをチャンスに変えていきます。

相手の予想より少し早めにレスポンスを返す、相手の予想以上の内容を提示する。そうやって常に期待を上回る対応を行っていくのが、顧客の信頼を得る近道です。企画書を提出する必要があれば、あらかじめ余裕を持った提出日を伝えておき、実際には早めに出して相手を喜ばせるといった駆け引きもあっていいと思います。

顧客にとって困るのは、「すぐできます」といいながら結論を引き伸ばされること。後手後手に回って顧客の催促を受けたり、催促を避けて没交渉になる営業マンもいますが、それでは信頼されなくて当然でしょう。

もちろん、こまめな報告・連絡・相談を行うという基本も、新人かベテランかにかかわらず常に実践してほしいことです。提案書を作るのでも、依頼を受けて提出するまでに1週間かかるのであれば、その間に顧客を不安にさせないように途中経過を見せるなどして、連絡かたがた意識合わせを行っておけば、よりよい結果につながります。

このようにマメに動くための秘訣は、顧客との面談が終わったら次に自分がすべきことをすぐ手帳に書くなどして、To Doリスト化すること。「後で考えればいい」と思うと、結局延び延びになってしまいます。

また、時間の使い方も工夫できる点はあります。顧客側の状況にもよりますが、商談に同じ1時間を費やすのでも、1カ月に1回の訪問で1時間使うより、1回20分に短縮して3回訪問したほうが、顧客へのインパクトは強くなります。もちろんこまめな報告・連絡・相談のためでもありますし、顧客も忙しく、1回の商談に長い時間をさくのが難しくなっているという事情もあります。

逆にいえば、面談に1時間以上を設定してくれる顧客には、大きなニーズがあると思ったほうがいいでしょう。

顧客の状況に合わせて、マメにやりとりをしながら情報提供を行ったり、聞かれたことに答えたり動いたりといったことを手間を惜しまず実行するのは、それだけで強い競争力になります。もしライバル企業の営業担当者がそういうタイプなら、相当手強いと思ったほうがいいでしょう。

(構成=石田純子 撮影=宇佐見利明)