「SACOの本質は移転でなく新設」

“世界一危険な基地”として知られる沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場返還問題で今、国会がいよいよ移設先の本格的な議論を始める。「政治と金」問題で失速したまま参院選に突入せざるをえない鳩山民主党が、国内世論をとりまとめた後に向かう相手は米国オバマ政権。「外交と軍事、そして沖縄県民の安全と安心」をテーマに、移設先に関する政権与党の決断が注目される今国会は、日米安保改定50周年を象徴する論議の場となる。

現在、国内の在日米軍施設は84、占有面積は3万1002ヘクタール。このうち33施設、2万2924ヘクタールが沖縄に集中しており、対全国比の面積占有率は実に73.94%。沖縄米軍の内訳は「海兵隊」「空軍」「海軍」「陸軍」「その他」だが、なかでも海兵隊は施設数15、面積1万7674ヘクタールと最大規模だ。

その米海兵隊有数の航空基地として宜野湾市中心部に置かれた普天間飛行場の面積は、市全体の4分の1を占める約480ヘクタール。KC130空中給油機12機、CH53E大型ヘリ15機など約70機が配備され、ここからイラク戦争にも派遣された。米海兵隊は防衛ではなく、むしろ侵略的攻撃のための部隊である。

本土では想像もできないような爆音と電波障害、航空機の墜落、そして米兵による凶悪犯罪……。米軍基地周辺では長年、事件と事故が絶えなかった。95年9月4日、キャンプ・ハンセンに駐留する3名の米海兵隊員が、12歳の少女を拉致して集団暴行するという忌まわしい事件を引き起こし、県民の怒りが爆発する。「沖縄米兵少女暴行事件」である。しかも当時の日米地位協定では、殺人や強姦などの凶悪犯罪であっても起訴されなければ日本側が身柄をとることはできないことになっていたため、3名の実行犯が日本側に引き渡されることはなかった。「米軍基地の整理・縮小・撤廃を協議する」という名目でSACO(沖縄に関する特別行動委員会)が立ち上がったのは同年11月である。