学校や先生によって性教育の熱心さはまちまち

親がせっかくのチャンスを逃し続けると、その子は家庭で性教育を受けられないまま成長していってしまいます。「学校で教えてくれるんだからわざわざ親が教えなくても」と思うかもしれませんが、残念ながら、日本では性教育の実施度合いは学校や先生によってまちまちです。

もちろん熱意を持って性教育に取り組んでいる先生もいますが、恥ずかしい、照れくさいといった思いからあまり教えようとしない先生もいます。ですから、現状では学校はあまり当てにならないと言わざるを得ません。今の大学生に聞いてみても、小学校〜高校で性教育を受けた人もいればまったく受けていない人もいて、同じ世代でも大きな差があるのだなと実感しています。

もし子どもが私立を受験するのなら、性教育に熱心な学校かどうかを事前に調べておくのもひとつの手です。性教育を行うということは、生徒を大事に考えていることの証しでもありますから、親としては安心して通わせられるのではないでしょうか。

親だからこそできること

そのうえで、性教育は子どもが聞いてきたときが最大のチャンスと捉えて、家庭でも教えるようにしてほしいと思います。ただし、子どもの発達段階を踏まえた「適切な教え方」が大事。算数の指導で小学1年生にいきなり関数を教えたりはしないように、性教育もその子の成長に合わせて行っていくようにしてください。

幸い、最近は性やジェンダーの本にも子ども向けのものが増えています。また、親が性教育を考えるための本もたくさんあります。こうしたものを活用して、わが子に合ったタイミングで、そのときの発達段階に合った性教育を行っていきましょう。

タイミングや発達段階の見極めは、その子をいちばん近くで見守っている親だからこそできることです。わが子の中に自己肯定感を育むために、性教育を特別視せず、「知っておいてほしいこと」として伝えてあげていただけたらと思います。

構成=辻村洋子

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。