貧乏なときに買う本は人生を豊かに

作家・書誌学者 林 望●1949年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。著書に『イギリスはおいしい』『節約の王道』など。

小遣いが月に3000円だってんでしょう。20日稼働として1日200円以下。極めて厳しい。このくらい厳しいとむしろ清々しい。腹を括って頭を使わざるをえないからです。お金のないときこそ、ライフスタイルを再点検する好機ととらえればよいのです。

まずは惰性で続けてきたことを見直す。喫煙者ならばタバコ。酒好きの付き合い上手ならば外で呑むこと。二大嗜好品のテコ入れが効果絶大なことは論を挟む余地がないでしょう。だからこそ「そんなこと言われたくない」とむっとする方も多いかもしれません。ここでのタバコと酒は「自己再点検」の象徴です。習慣化しているものには、必ず無駄がこびりついています。そこに切り込んでいく気概を持ってほしいわけです。

ぼくも若い頃は本当にお金がない貧乏学者でした。酒もタバコもやらないので暖房費を切り詰めた。暖かいだけが取り柄の安い衣服を買ってきて、モゴモゴと着込んで寒さを凌いだものです。

そうやってライフスタイルを見直していく。しかし倹約のノウハウばかりを並べるばかりでは、ぎゅうぎゅうと雑巾を絞るようで、希望がない。「引き算」の発想です。

そこで「足し算」を持ってくる。未来のために時間投資をしよう。そういうことです。節約とはノウハウではなく、心の持ちようの問題なのです。