国境を接する国は昔から仲が悪い

おそらく中国もアメリカとロシアを仲たがいさせようという動きをしているでしょう。しかしながら、中国とロシアも潜在的には非常に仲が悪い。なんといっても国境を接していますから。

そもそも古代から国境を接する国同士で、仲のいい国はあまりありません。現在、表向きではスウェーデンとフィンランドは仲がいいといっていますが、潜在的にはそうでない人もたくさんいるでしょう。ドイツとフランスは、その典型ですし、北朝鮮と中国もそうです。国境争いをずっとやってきているので、互いにいい感情を持っていないのです。

アメリカ合衆国メキシコ国境の壁
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中国とロシアも、何万キロと国境を接していますから、昔からお互いに疑心暗鬼。そこに、ちょっと離れたところにいるアメリカが「俺のところに来いよ」とロシアを引き寄せようとしているけれど、ロシアはロシアで自分たちは世界ナンバー2までいったという誇りがあるので「簡単にはアメリカにはなびかないぜ」というところがある。

ただ、やはりロシアも中国を恐れています。今、中国はロシアの持っているシベリアあたりの土地を「もとは中国の土地だった!」と主張していますから、中国に対していい感情は抱いていません。ロシアは、どっちにもつかず、うまいこと泳いでいきたいなという考えでしょうね。

日本にも不都合なロシアの北極圏開拓

そんな微妙な関係にある三者が、今まさに権益争いをしているのが北極圏です。前のめりになっているのがロシア。最大の沿岸国であるロシアにとって北極圏は、新しい商売ができるエリアだからです。

通常、アジアからヨーロッパに行くときは、マラッカ海峡からスエズ運河を抜けて、地中海を通るルートでしたが、21年3月に発生したスエズ運河の大型船座礁事故で、ロシアはインド洋からスエズ運河に抜けるルートよりも北極海ルートのほうが、時間は3割カットできると主張し始めました。地球温暖化もあり「夏は北極海が通れるようになるから、どうぞ上を回ってください」と。ロシアとしては、給油や救護などのサービスを狙って北極海ルートを活用したい。「やったぜ、俺たちの商売だ」ということで、「北極海ルートが空いています」と意気揚々と声明を出していました。

地震の北極海
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一方、中国も北極圏を狙っています。マラッカ海峡を管理しているのはアメリカ海軍ですから、中国としてはなるべくマラッカ海峡を通りたくない。でも経済力が上がれば上がるほど原油を調達するために、マラッカ海峡を通らなければなりません。これを“マラッカジレンマ”といいます。このジレンマを解消するために、ミャンマーにパイプラインを通してアジアの北から直接インド洋に出ようとしていますが、そういう意味で北極海ルートも都合がいいわけです。

そんな中国とロシアに対して、アメリカは警戒感を強めているというのが現状です。

北極圏が開いてロシアの発言権が強くなると、実は日本としても非常に厄介です。というのは北極海ルートができると、中国や韓国の船は北上して、国後島や択捉島といった北方領土の国の前を通るようになります。そうするとロシアは、北方領土をビジネスに使いたいと考えて、北方領土が返ってこないという公算がますます高まっていくのです。

だからといって日本がロシアのようにビジネスができるかというと、そこまでの力はありませんし、ロシアに「北方領土を返せ」というと、「北極海ルートは使わせないよ」と圧力をかけられる恐れもある。ロシアが北極圏を開くことは、日本としても非常に都合が悪いのです。

現状、北極も南極のように、きちんと条約をつくりましょう、環境のこともきちんとやりましょうと、日本は得意の根回しをしていますが、各国の利害がからみあって、なかなかまとまらないようですね。