新型コロナウイルスなどの病気を遠ざけるには「免疫力」を高めることが重要だ。一体なにをすればいいのか。東京医科歯科大学副学長の古川哲史氏は「医学の常識はどんどん更新されている。たとえば野菜が健康にいいのは『毒だから』という説が有力だ」という——。

※本稿は、古川哲史『最新研究が示す 病気にならない新常識』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

コロナウイルス
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野菜が健康に良いのは“抗酸化物質”ではなかった?

「野菜を食べることはどうして健康に良いの?」と訊かれて、きちんと答えられる人は少ないようです。これは無理からぬことです。なぜなら、専門家の間でも答えが一致しているわけではないからです。

今まで最も信じられていた考え方は、「野菜に含まれる“抗酸化物質”のおかげだろう」というものでした。ヒトに限らず生物は生きていくうえで、酸素が必要です。このなくてはならない酸素ですが、多すぎると害になります。過剰な酸素からは「フリーラジカル」と呼ばれる有害な物質が出るからです。

野菜に含まれるビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどは、フリーラジカルの有害な作用を抑える力があります。これを「抗酸化作用」といいます。だから、野菜は健康に良いのだろう、とこれまで専門家も含めて多くの人が信じてきました。

ところが、これを証明しようとして多くの研究者が、動物実験やヒトの臨床研究で、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどの抗酸化物質を投与したところ、確かに抗酸化作用があるものの、到底食べきれないほどの大量のそれらを摂取しない限り、フリーラジカルによる障害を予防することはできないことがわかりました。

野菜に含まれる抗酸化物質は身体に良いのだけれども、日常的に食べている量の野菜によって健康を維持できるのは、どうも抗酸化作用が理由ではないといえるようです。

では、どうして野菜は健康に良いのでしょう?