最後は大手メーカー営業部門の中澤正弘さん(仮名、42歳)のご自宅。千葉県内で、妻の幸子さん(同、40歳)と小学生の長女、幼稚園児の長男、義父母の計6人が同居する。
「給与体系ですか? しょっちゅう変わるのでよくわからなくて……確か、今は年俸制じゃなかったのかな? 」
と苦笑する幸子さんだが、正弘さんの年収は950万円。昨年末のボーナスは、これまでの最高額だった。
「昨秋以降、特に仕事上の変化はありません。現在はお客様や同業種の景気が悪く、少々心配はありますが、(東証)一部上場の大企業なので、先行きにまだ不安はありません」(正弘さん)
いくら貯金があれば普通に生活できる?
幸子さんは最近、「40にもなって読むな!」と、正弘さんに漫画週刊誌とタバコをやめさせた。「やっぱり、御飯を家で食べると一番お金が貯まりますね」というが、土・日は基本的に家族で外出。都内も含めて方々へ車で出かけるほか、たまに夫婦でゴルフを楽しむ。
「なるべく安い平日を狙って、1万円以下で抑える」(幸子さん)
二世帯住宅に近いつくりの自宅は、4年前に4000万円で新築した。
「有り難いことに、鳥取の主人の実家が『そちらで建てなさい』と。双方の実家で出し合ったので、ローンの負担は月々6万~7万円、ボーナス時20万円。昨年で支払いは終えました。今は月2万円ずつ先々の修繕費を貯めています」
大手ならではの“特典”もある。携帯電話一つ取っても会社支給だから、「それだけで月に5000~1万円は浮く」(幸子さん)。正弘さんが通話を多用し、幸子さんが1日10通以上メールをやり取りしても、固定電話と併せて約1万円。
正弘さんの生命保険・年金は、「ちょっと辛いけど」(幸子さん)40万円ほどかけて全額を年払いに。子供2人の学資保険の保険料は、「月払いだと元本割れするかも」と、加入時に割安な一括払いで済ませた。現在、社内財形なども含めた預貯金は800万円弱。
「これから子供にお金がかかるので、すっごく不安。ニュースでメーカーの凄い落ち方を見ると恐ろしくなる。このままだと(子供の)私立はない。年金は当てにならないから、やっぱり貯めておかないと。私は一人っ子だから、親の面倒も見なきゃならないし」(幸子さん)
今後、いったいいくら貯金があったら普通に生活できるのかわからない。怖い……と胸のうちを明かした。
今はどれだけ蓄えようと十分とは言い難いのだが、一見、高年収の方々の預貯金を心許ないと感じるのは、筆者だけではないだろう。まだ余裕のあるご実家と家計が“一体化”するのも無理はない。
今時、能天気な家庭などない。マクロ経済の混乱がまだ序の口なだけに、方策を講じるか、手を拱いているかが今後の切実な分かれ道となりそうだ。