借りて、返して、また借りる繰り返し

月収の使い道
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月収の使い道

「夫バレ厳禁」を条件にお会いした専業主婦の山田洋子さん(仮名、33歳)は、生後10カ月の長男と3人で、神奈川県川崎市の月9万円の賃貸アパートに住む。

430万円の年収。ますますシビアに……と思いきや、不況は追い風だという。

「旦那さんの収入でやっていけない主婦の方々が、『じゃあ、頑張んなきゃ』とここの販売員になって働き出すので」

夫(33歳)が売り上げ急伸中の健康食品メーカーの商品開発担当ときいて納得。6年半前の結婚当初の年俸300万円は、年々上昇しているという。

「スタートは良くなかったけど、ほかの職業と比べてけっこう上がっていくんです。それを期待して暮らしてる感じ」

ゆくゆくは夫が実家の後を継ぐ予定だ。生命保険、自動車保険の保険料や携帯電話など通信費も実家から出る。帰省の際は、500キロメートル以上離れていても新幹線ではなく、燃費のいいホンダ「フィット」で高速道路を飛ばす。

神奈川県川崎市在住<br>
夫●33歳 妻●33歳<br>
10カ月の長男と3人暮らし。ベビーカーを押して、母親どうしや、昔の友達とよく出歩く。「『外食代が多すぎる』って夫に怒られます」。撮影場所は駅前雑居ビル周辺。「あの看板の前で……」と恐る恐る注文をつけると、大笑いして即OK。
神奈川県川崎市在住
夫●33歳 妻●33歳

10カ月の長男と3人暮らし。ベビーカーを押して、母親どうしや、昔の友達とよく出歩く。「『外食代が多すぎる』って夫に怒られます」。撮影場所は駅前雑居ビル周辺。「あの看板の前で……」と恐る恐る注文をつけると、大笑いして即OK。

しかし、家計には大きな重石が。2年前、カードローンの借金が200万円生じたという。洋子さんには内緒で、夫がパチスロで散財していたのだ。当然、貯金はゼロ。というよりマイナスだ。

「夫はすぐ熱くなって、1日であっという間に20万円くらい使っちゃう。なのに、『20万使っても、25万出てくればいいや』みたいに考える。長年一緒に暮らしていると、『ちょっと行動がおかしい』とか、何となくわかるじゃないですか。そこで、ちょっと探偵みたいな真似をして証拠をつかんだんです。でも、最初はしらばっくれてましたね(笑)」

頑張って月6万円ずつ返済しているが、2年たっても残高が約30万円しか減っていない。「すべてがぐちゃぐちゃで、きっちりするのが嫌になった」とこの間、家計簿はつけていない。

「地道に返済し続けても、冠婚葬祭とかがあって足りないとまた借りちゃう。借りて、返して、また借りてを繰り返すから(借金の残高が)減らない。私が働くしかないと思うんですが、長男が3歳になるまではやはり我慢すべきなのか……」

単利とか複利とかがよくわかっていなくて……と少々心配な一言も。市から出る児童手当もつい使ってしまうので、反省して最低額の学資保険に加入した。

「ベネッセの『こどもちゃれんじ』を始めましたが、お受験とかは何も考えてません。何でほかの人が私立に行かせたがるのかわからないし。自分の服は、ヤフオク(ヤフー・オークション)を利用して購入してます」

夫のパチスロ熱はさすがに冷めたという。最近、家計簿を再びつけ出した。

「でも、今の状況を何とか抜け出せるかは……微妙です」

自ら稼ぐため、長男を預ける時間が短くてすむヤクルトレディを検討中だ。

(撮影=浮田輝雄、永井 浩)