なぜ彼女は不倫夫と離婚しないのか
彼女は、夫はヴィンテージものの家具だと考えたらいいという。長く使えば使うほど味が出る、傷も含めて味だというのである。
「金銭面とか、女性関係とか、それぞれ家庭内には問題があると思いますが、傷を楽しむぐらいの余裕があるといい」
いまだからいえることなのかもしれない。それが証拠に、
「宮崎の騒動を経験したあとだからというのもありますが、まず生きていくうえで大切なのは、やはり困難を乗り越える強さではないでしょうか」と、同じ境遇にいる女性が聞いたら、「あんたにいわれたくない」と怒られそうなことを書いている。
この本を読んでいて、なるほどと思ったのは、夫に毎日、日記を書かせ、それを彼女が読むというところだ。
「心から書いている日記であり反省文だと思いました。彼の記したひと言ひと言が、私の心にとても刺さったのです」(同)
そして彼女は、別れない理由をこう書いている。
「宮崎は浮気をしたけれど、反省し、生き方を変えると言ってくれました。彼は結婚しようと私が選んだ相手であり、そもそも人は誰しも完璧ではないのだから、私自身は彼を信じ、許し、守って、一緒に歩んでいこうと決めたのです」
昔流行した言葉に「反省は猿でもする」というのがあったな。
長い人生には多少の波風は立つものだ
金子恵美は、毎週のように他人の不倫を暴く週刊誌への批判や、それを無批判に受け入れて、その人間を指弾する社会の風潮への疑問も投げかけている。
いわんとするところはわかるが、週刊誌屋稼業だった私にいわせれば、面白いネタがあればどこへでもすっ飛んでいくのが週刊誌である。社会の不正を正そうなどという高邁な考えなど毛頭ない。理屈は後から貨車でついてくるのである。
彼女は今「不倫」についてもフランクに話せる元議員としてテレビに出ている。夫に不倫されて売れっ子になったのは、彼女が初めてではないか。
議員時代より収入が増え、別荘を購入したとも報じられている。あの時別れなくてよかったと、毎夜2人で乾杯しているかもしれない。
このように、幸福な家庭はどれも似たものだが、夫が不倫した家庭はそれぞれ違うのである。
私は個人的には、家庭は少し不幸なぐらいがいいと思っている。どんなに平凡に暮らしていても長い人生には多少の波風は立つものだ。
それが人生に彩を添える。決定的な破局に至らなければ、それを経験するのも一興。ここで見てきた、心優しくたくましい妻たちは、それをよく知っているのであろう。(文中敬称略)