報酬1億円以上の経営陣を除いた平均報酬額
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報酬1億円以上の経営陣を除いた平均報酬額

報酬が1億円以上の取締役ばかりにスポットライトが当たっているが、全体の傾向も見ておこう。表(2)は1億円以上の報酬を得ていた取締役・執行役が在籍する企業について、1億円未満の取締役の平均額をまとめたものだ。取締役の平均像といってもいいだろう。

日産の1億円未満の取締役2人の平均報酬は4150万円。トヨタ自動車は6636万円で、ホンダは5077万円だ。JT6900万円、コマツ5940万円、味の素5858万円、パナソニック5028万円、日立製作所3488万円、東芝3425万円……。グローバル企業といえども、経営陣への仲間入りだけでは、報酬1億円が見えてこないということだ。

1億円以上の報酬を得ている役員を除いた平均が1000万円を切るのは、栗林商船、双葉電子工業、トシン・グループ、トーシン、三光マーケティングフーズ、シダックス。もちろん、これらの金額に使用人兼務としての収入や子会社からの収入が加算されていると見るべきだろう。いずれにしても企業間格差もあれば、同じ社内での取締役間格差もある。

一方、報酬1億円以上の経営陣を出さなかった企業の代表は、シャープやスズキ、王子製紙、帝人、NTT、楽天など。メガバンクでは唯一、三井住友FGに1億円プレーヤーはいなかった。

報酬支給が3カ月と推定される退任取締役などを勘案し、取締役9人で計算すると平均1億3000万円弱になる住友不動産(退任3人、新任3人)。会社が発表している支給対象者12人としても平均9700万円であり、報酬1億円以上の取締役がいつ出ても不思議ではない。

報酬1億円以上の経営陣がいなかった企業の取締役平均年収
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報酬1億円以上の経営陣がいなかった企業の取締役平均年収

キヤノンや旭硝子、ブリヂストン、キリンHD、アサヒビール、日本マクドナルドHDは12月期決算であることから個別開示はこれからといったところだ。

これら企業の数値からは、取締役に支給されている報酬の全体的な推移を見ることができるが、明らかなのは下降傾向を示していること。「賞与不支給・総報酬20%カット」の東京電力をはじめ、各社とも取締役の基本報酬や賞与カットに動いたことは想像に難くない。

非上場ということもあって40人以上による取締役体制を維持してきた竹中工務店が9人体制に移行したことでも明らかなように、経営陣の少人数化は大きな流れ。上場企業で取締役の総数が20人を超えているのは、東レやヤクルト本社、伊藤園などご少数にとどまる。ファーストリテイリングにいたっては、社内取締役は柳井正会長兼社長ただひとりだ。

狭き門がますます狭まる取締役への道。薄くなる財布。取締役受難からの復活はあるのだろうか。

[表2] ワークスアプリケーション、ソフトバンクは支給対象者全員が個別開示。資生堂は1億円以上の2人と6600万円の1人を除いた数値。
[表3] 1人当たりの平均額は、報酬、賞与、使用人兼取締役の使用人分の給与・賞与、ストックオプション、退職慰労金引当金繰入額(当期増額分)などを含めた総額を、基本的には年度末の取締役員数で除している。退職慰労金引当金繰り入れが過年度分を含めて一括計上と推定される場合は総額には含めていない。社内取締役が対象。社内取締役と社外取締役の区分けがない場合は、人数に「※」を付し、社外取締役は0.5人として計算。退任・新任が多数の場合も調整し、人数に「※」を付している。

※すべて雑誌掲載当時