女性のアイデアやニーズは新規事業の宝庫

僕は長く企業で新規事業の立ち上げをしてきましたが、その中で、意思決定者のほとんどが男性であること、それゆえ女性のアイデアやニーズが埋もれがちなことを、ずっともったいないと感じてきました。

もともと僕は、4人きょうだいの中で男は自分だけという「女性マジョリティー」の中で育ちました。学生時代はそこまで男女比を意識したことはありませんでしたが、IT業界に入った時に強い違和感を持ったのです。

たとえば2006年に入社したNTTドコモでは、新卒採用時の男女比率は6対4で、社員全体でも7対3の割合を維持していました。それなのに、新規事業部門になると9割が男性。決定権を持つ人も全員男性で、女性がアイデアを出しても通りにくい状況にありました。といっても男性側に女性を冷遇する意図があったわけではなく、単に女性たちのアイデアやニーズを理解できなかったからなんです。

これはとてももったいないことで、事業の面から考えれば機会損失そのもの。当時はスマホがすごい勢いで普及し始めた頃でしたが、大化けしたサービスはどれも、女性がカギになっています。たとえばインスタグラムは「何となく写真がおしゃれになる」、LINEは「キャラクターが何だかかわいい」といった、機能やスペックだけで説明できない理由で大ヒットしました。いずれも、女性や女子高生の間で人気になったのがきっかけだと言われています。

世の中には、僕を含めたおじさんたちには理解できないニーズがゴロゴロある。なのに自分の職場では、女性のアイデアやニーズが日の目を見ないまま埋もれているわけです。ちゃんと形にすれば事業として成功する可能性が大いにあるのに、何でそうできないんだろう──。

そんな疑問に対する自分なりの答えが、uni’que(ユニック)の起業でした。当社では女性向けサービスに特化した事業や、女性起業家を創出するインキュべーション事業を行っています。特に重視しているのは、「バンドスタイル」という意思決定権の分散と女性に意思決定権を持ってもらうことです。僕がわからないニーズをいかに世に出せるか。「社長がわからないから却下」は、機会損失でしかないと思っています。

僕の登壇は、女性登壇者の席を1人分奪う

このように、女性の可能性を信じ、その発信もしてきたつもりでいたのですが今年の6月、あるイベントの打診を受けた時にハッと気づいたんです。「自分は女性のアイデアやニーズの可能性を信じてずっとやってきたけど、実はそう行動できていない部分があったんじゃないか」と。

これはブログにも書きましたが、そのイベントには女性登壇者が1人もいませんでした。自然に選んだら男性ばかりになっていたそうです。ここが問題で、そういえば自分の過去の登壇イベントを振り返っても、9割近くが男性でした。

以前から、男性だらけのベンチャー系イベントには、「まだ男性ばっかりだな」と違和感を持っていました。でも実はどこか、人ごとのようにとらえていたんです。

イベントの登壇者として声を掛けていただくと、やっぱりうれしくてお引き受けしていたのですが、よく考えたら、僕が登壇するということは、女性登壇者1人分の席を奪うということ。自分もジェンダーギャップを広げている当事者だったわけです。