危険な原発とどう向き合うか。小泉進次郎は学生たちに、孫正義は国会議員を前に、講義を行った。田原総一朗も注目するこのスピーチをすべて公開する。

――田原総一朗 原発依存か脱原発かの論議がさかんになっているが、私は、石油や天然ガスなど化石燃料の枯渇などを考えると、日本の全電力の約3割がまかなわれている今の原発中心の電力供給の転換を目ざすとすれば、その実現へ向けてしなければならない論議があまりにもなさすぎると思う。一つは冒頭で触れた原発の使用済み燃料の処理問題、そしてもう一つが太陽光や風力、地熱などの新エネルギー開発への取り組みである。

<strong><strong ></strong>田原総一朗●ジャーナリスト</strong></strong>
田原総一朗●ジャーナリスト

その点で孫氏の太陽光や風力など自然エネルギーに対する発想は極めて面白いし、リアリティがあると思う。これまで脱原発を言う人には思想的に反対する人もかなりいたが、それはどこか反体制の思いに通じるところがあった。ところが孫氏の脱原発は思想的な体制、反体制などとは全く関係がない。彼が脱原発、自然エネルギーへの転換を訴える背景には、これから自然エネルギーの重要性が増し、大きなビジネスチャンスになるという考えが根幹にある。自然エネルギーが日本でどのように普及し広がり、それがいかに大きな事業として成長していくのかが、一番の関心だと思う。

かつて孫氏は電電公社の民営化を主張し、電気通信の自由化を訴えた。その結果、携帯電話事業へ進出し、見事に電気通信分野に参入することに成功した。これと同じように彼は、地域独占によって、電力会社9社体制でがっちり押さえられている電力業界に食い込みたい。そのためには電力の自由化、発送電の分離などによってどこまで食い込めるかを考えており、その実現のためにも自然エネルギーへの思い入れが強いのだろう。私は電力の地域独占による弊害はいっぱいあると思うし、彼が発送電分離の実体化をどこまでやるのか関心がある。繰り返すが、孫氏の脱原発は、イデオロギーによる反対でも賛成でもない。そこが孫氏の骨頂だし、私がリアリティを強く感じる理由でもある。まさに事業者である孫正義を私はとっても信頼している。

小泉進次郎氏の元気もいい。多分小泉純一郎元首相同様、自分の言葉に命を懸けている。最近の政治家で一番評価しているのは小泉元総理だが、彼は言葉の力で権力を取った人だ。息子の進次郎氏も発言を変えないし、ブレがない。ここに書かれている内容も筋が通っている。

進次郎氏の言葉に説得力があるのは、言葉に、政治生命を懸けているからだ。10年末、自民党本部で自民党改革の講師をしたが、彼はなかなか鋭い質問をしてきた。まだ一年生議員だが、将来は親父に勝る総理になるのではないかと政治家として期待が持てる。私は小泉元総理よりも進次郎氏のほうがラジカルだと思う。父親は世間が思うよりバランス感覚を持っていたが、彼はもっと激しいものを持っている感じを受ける。面白い。

※すべて雑誌掲載当時

(吉田茂人=構成 小原孝博=撮影 ロイター/AFLO=写真)