光熱費、PC購入代……「柔軟な働き方」で損していないか

①通勤定期代の廃止と実費精算→公的年金への影響
②オフィスの廃止と賃料負担の削減→在宅勤務に伴う通信費・光熱費など自己負担発生
③残業代の廃止・縮小
④「成果主義」評価の強化→年功給・諸手当の廃止

在宅勤務が多くなれば、通勤定期代を払うのは割高になる。企業としては出社した分を払えばコスト削減になる。実際に原則在宅勤務にしている企業の中には実費精算に切り替えたところもある。一カ月数万円の定期代の負担の削減だけではなく、もう一つのメリットもある。実は通勤手当は報酬と見なされ、通勤手当込みの報酬月額に対して一定率の公的年金保険料や健康保険料などの社会保険料を企業は支払う必要がある(労使折半)。

つまり通勤手当がなくなる分だけ企業の支払う社会保険料は軽減されることになる。一方、従業員は将来受け取る公的年金が目減りすることになる。

さらにコスト削減で大きいのは②のオフィスの賃料である。例えば都心の3フロアの事務所を1フロアにすれば大幅なコスト削減になる。もともとテレワークのメリットとしてオフィスコストの削減や車で通勤する駐車場コストの削減が指摘されていたが、すでにそうした動きが加速している。このこと自体は在宅勤務というメリットを享受できる社員とコスト削減できる企業がウィン・ウィンの関係といえるかもしれない。

ただし、それは社員がオフィス勤務で得られていたサービスを在宅でも得られるという前提があっての話だ。つまり在宅勤務に必要なパソコンや機材などのイニシャルコストと通信費・光熱費などのランニングコストを企業が負担してくれるのかということだ。損害保険ジャパンの「働き方に関する意識調査」(5月1日~2日)によると、在宅勤務にあたり約2割がOA機器などの物品を購入し、購入金額の平均は6万7550円。また、楽天インサイトの「在宅勤務に関する調査」(4月10日~12日)では在宅勤務で困ったこととして「光熱費や通信費がかさむ」と答えた人が24.5%、女性は37.4%に上る。これらの費用を企業が負担しなければ決してウィン・ウィンとは言えないだろう。