2008年10月27日(月)

ホテルマンに学ぶ「Yes,but」コミュニケーション

PRESIDENT 2007年8月13日号

著者
蔵田 理 くらた・おさむ
元ホテルオークラ宿泊部副部長、サービスコンサルタント

1953年生まれ。東京YMCA国際ホテル専門学校を卒業後、ホテルオークラ入社。18年にわたり玄関、ロビーを担当するサービスマンのスペシャリストとして勤務。ホテルマン生活30年間で約3000人の新人指導の実績をもつ、接客のカリスマ。著書に『上客がつくサービスつかないサービス』がある。

元ホテルオークラ宿泊部副部長/サービスコンサルタント 蔵田 理=文 中島 恵=構成
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顧客に「紙一重上のサービス」を提供するためには、どんな心構え、対話、行動が必要なのか。「接客のカリスマ」と言われる元ホテルマンが、長年の体験をもとに、顧客の心を捉えるコミュニケーション法をお伝えする。

伝えたいポイントを3つに絞り込む

私は1977年にホテルオークラに入社して以来、約30年間ホテルマンとして働いてきた。フロントサービス、ベルマンなどを経て社内サービスインストラクターの第一号となり、新規ホテル開業スタッフの指導なども担当し、2000年の九州・沖縄サミットでは外務省の臨時職員として接遇の指導もした。これまでに約3000人の新人を指導した経験をもとに、現在は独立しサービスコンサルタントを生業としているが、ホテルマン新人時代には苦い経験の連続だった。

新人ベルマンだったある日、VIPである一流企業の会長の荷物を持ってエレベーターで客室までご案内しようとしたときのこと。「なんだ、その荷物の積み方は!」といきなり怒鳴られた。会長は台車の上に積まれた3つの荷物のうち2番目が曲がっていることを指摘して怒り出したのだ。曲がったといってもほんの数センチ程度だったのだが、会長は私が新人のベルマンだとわかって「君はこのサービスでメシを食うんだろ。そんな中途半端な仕事をしていたら一人前にはなれないよ」とあえて厳しく叱り、プロとしての心構えを教えてくれたのだった。

良いサービスを提供するためにまず「自分自身が商品だ」と言い聞かせて、ホテルマンとしての身だしなみ、話し方、行動の仕方にもプロとしての仕事のやり方を考えるようになった。特にコミュニケーションのとり方は大切で、これが仕事の基本だと確信している。

何かを「相手に伝える」ということは、自分が理解していることをそのまま伝えることとは全然違う。「四の五の言うな」という言葉には「ああだこうだと理屈を言うな」という意味のほかに「1度に多くを言っても覚えられない」というニュアンスもある。人間が1度に覚えられることはせいぜい3つ程度。登場人物が多く時間や場所が複雑な話ならなおさらである。ポイントを簡潔に3つに絞り、第3者にわかりやすく説明できるようにふだんから練習しておくべきである。

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