「第15回欧州呼吸器学会」が9月17日からの5日間、デンマークのコペンハーゲンで会員1万6000人が参加して開催された。

この2005年の学会で、何よりも注目されていたのが「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」だ。世界中から集まったマスコミもそこに注目した。

それもそのはず。今、世界で毎年約250万人がこの病気で死亡しており、死亡原因の第4位となっている。

日本には530万人の患者がいるとされているが、実際に医療機関で治療を受けているのは、わずか22万人。早期発見、早期治療には大きな効果があるだけに、受診率を上げるために病気をより広く認識してもらう必要がある。

COPDとは慢性気管支炎と肺気腫を包括した疾患名である。気管支に慢性的に炎症が起きて気道が狭くなったり、ガス交換を行うブドウの房のような肺胞の壁が破壊されたりすることで気流制限が起きる病気である。

代表的な症状は「息切れ」「咳」「痰」。50代以降に多く、階段を上がったり、重い荷物を持ったりしたときに息切れを起こす。息切れは患者の日常生活を制限し、QOL(生活の質)を大幅に低下させてしまう。

原因には喫煙、大気汚染、鉱山などで働く職業的暴露、α1アンチトリプシン欠損症(肺の弾性線維の喪失を防ぐ酵素が欠損している遺伝的疾患)などがあげられるが、80~90%は喫煙が占めている。

診断ではリスクファクターと症状が問診によって評価され、COPDの疑いがあるとスパイロメトリー(気流制限測定)で肺の換気能力を調べる。そして、「リスクを有する状態」のステージ0から「最重症」のステージ4まで5段階に分類される。治療のスタートは、まずは禁煙。次いで薬物療法で、気管支拡張薬の抗コリン薬、β2刺激薬を使う。

学会ではオランダのライデン大学呼吸器内科のクラウス・ラーベ教授らの臨床試験に高い評価が集まった。

試験では吸入用抗コリン薬「スピリーバ」とβ2刺激薬「フォルモテロール」(日本未発売)の異なる作用機序を持つ2種類の長時間作用型気管支拡張薬によって最適に気管支を拡張させるほうが、長時間作用型気管支拡張薬のβ2刺激薬「サルメテロール」と、抗炎症薬の吸入ステロイド薬「フルチカゾン」を併用した治療よりも、患者の肺機能を良好に改善する、ということが明らかにされた。

これは、国際的ガイドラインにより推奨されたCOPDの治療法の妥当性を裏付けるものである。

また、多くの学会員からは、開業医レベルで正しく診断されていない現実から、「スピリーバを使い、効果の有無でCOPDと診断がつく」という声もあがった。それは、息切れが改善した場合にCOPDと診断がつくのである。

04年12月に日本でスピリーバの使用が可能となり、COPDは予防できる、治療できる時代に突入した。

 

食生活のワンポイント

COPDの治療では、呼吸理学療法、酸素療法、運動療法、そして栄養指導も不可欠である。COPDの患者はやせていくので高たんぱく、高カロリーの食事を心がけよう。もちろん、太るほどのカロリーは必要とはしない。

ポイントは、1度に食べる量を多くしないで、6回の食事を5回、6回くらいに分けて食べることだ。食べ物の消化にも酸素が必要なので、多く分けたほうが苦しまずにすむのである。

また、予防としては、基本は次の2点。

(1)1日30品目を食べ、バランスの良い食生活を心がける。
  (2)抗酸化食品をしっかり食べる(お茶、トマト、ブロッコリー、ピーマン、ブドウ、ブルーベリー、ゴマ、サバ、サケ、マグロなど)。