なぜ、日本人は休日の混雑する街で買い物をするのだろうか。ドイツでの生活が長い熊谷徹さんは、その理由を長時間労働で自由時間も心のゆとりも乏しく、短時間で済ませられる娯楽として消費が選ばれていると指摘する。買い物で疲れて帰り、結果的に心身ともに休まらない悪循環を、私たちはどうしたら断ち切ることができるだろうか。お金に縛られないドイツ人の生活のなかにそのヒントがある――。

※本稿は熊谷 徹『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』(青春新書)の一部を再編集しました。

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日本人はなぜショッピングが好きなのか

日本人の間には、消費を娯楽としている人が少なくない。日曜日や祝日にはほぼ全ての店が開いているので、繁華街へ出かけてショッピングを楽しむ市民が多い。日曜日や祝日には、オフィスで拘束される平日よりも自由時間があるので、売る側は店を開いて客を呼び込む。お金を稼ぐという観点からは合理的である。日本では、売り上げが平日よりも多くなる日曜日や祝日に営業しない店主は、よほどの変わり者であろう。

新しいスマホ、発売されたばかりのAIスピーカー、最新のタブレット型PC……。日本人が買い物にかける執念は、物すごい。したがって、企業もコマーシャルや電車内の広告などに多額の費用と手間をかけている。郊外から人々が流れ込むので、日曜日や祝日の繁華街の混雑は、すさまじい。最近の東京では、新宿や銀座、原宿だけではなく、少し郊外に位置する吉祥寺や立川ですら、日曜日には大変混雑する。ちょっとひと休みと思って喫茶店に立ち寄ろうと思っても、満席であることが多い。