高級外車を乗り回すが「葬式の布施1万円」

とはいえ、あえて言えば、布施をする側も常識的な感覚は必要だと思う。

最近では、ブランド品を身に着け、高級外車を乗り回しているのに「葬式の布施1万円」などというようなケースもあると聞く。「故人を供養したい」と願う心がけはそっちのけで、「なるべく安く済ませたい」とのコスト意識ばかりが優先するのであれば、布施の意味そのものが失われてしまう。

お寺に対しても失礼だ。人が亡くなった際には、住職は日時を問わずに枕経に駆けつけなければならない。仮に旅行の予定があったとしても、キャンセルして通夜・葬式をつとめるのが通例である。布施を出す際には一般通念上、金額が妥当かどうかを吟味する必要があるだろう。

生活に余裕のある人は、布施も多少は多めに包んでいただき、一方で、生活に困っている人は1000円でも1万円でも問題ない。僧侶は金額の多寡にかかわらず、きちんとおつとめをしなければならない。寺檀関係は相互にフェアでなければ、将来的に寺院や墓を維持していくことは難しくなるだろう。

もっとも、「お経も適当で、ろくに説法もしない。お寺も荒れ放題で、夜は銀座のクラブで遊びほうけている。こんな住職に布施を出したくない」というケースもあるかもしれない。そんな菩提寺ならさっさと、檀家をやめたほうがよい。

日本の布施水準は世界基準でみると高いのか安いのか

ちなみに、国際的にみて日本の布施水準は高いのだろうか。

たとえば、ドイツの場合には国家が教会税を徴収するシステムがある。自分の信仰する宗教がキリスト教であれば、所得税の8〜9%が教会税として課される。居住地の州や収入によってその金額は変わるが、年収の1%未満であることが多い。

撮影=鵜飼 秀徳
教会税が制度化されているオーストリアの教会の修繕風景(2011年)

仮に年収の0.5%だったとしても、1000万円の収入の人は5万円だ。日本の寺院や神社に年間5万円を払っている人は少数派だろう。寺院の墓地管理費は年間1万〜2万円のところが多いだろうか。数年に1回の法事や20年に1回程度の葬式での布施は生じることはあっても、トータル金額では日本のほうがドイツよりも負担が少ないとみてよいだろう。

教会税のある国は他にもスイス、オーストリア、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランドなどである。ドイツでは近年、この教会税に対する反発が激しく、教会を離れる国民が増えているという。とはいえ、教会税を導入する国では、国家が教会を支える仕組みを整えているわけだから、ドイツの教会は、日本の宗教法人の経営基盤よりは盤石だと言える。

米国の教会の場合は、富裕層が教会を支えている。信心深い億万長者が億単位で寄付をし、教会はその運用益で維持ができている。さらに、信徒による決められたメンバーフィー(会費)もある。