文部科学省への提出は「日程の調整がつかない」と拒まれた

佐藤さんは東京都への提出に先駆けて、前日には世田谷区にも署名を提出していた。しかし、文部科学省への手渡しによる提出は、「日程の調整がつかない」という理由で拒まれ、結局8月末に郵送での対応となった。

「中学生と高校生が自殺をするのは夏休み明けが最も多いと言われていますので、何とか8月中に署名を提出して、希望が持てるようなメッセージを発信したかったのですが、かないませんでした」

日程の調整だけではない。部署をたらいまわしにされることもあった。さらに、署名サイトでは住所を記入しないため、「住所のない署名は受け取れない」という指摘も受けた。しかし、佐藤さんは署名に賛同した人たちの思いを伝えるため交渉を重ね、東京都と世田谷区はそれに応じてくれたという。

「個人での活動なので、厳しさは感じています。相談機関の設立も、現時点で実現が難しいことはわかっています。それでも8月中に受け取ってくださいとお願いして、東京都と世田谷区には提出できました」

厚い壁を感じる一方で、明るい兆しもあった。今回の署名活動に大きな反響があったことで、将来に向けて訴え続けることの手応えを感じた。そして佐藤さんの行動を支援する人々も現れたという。

「署名活動は疲れましたし、このような活動をすることで、僕自身いろいろなものを失いました。その一方で、協力していただける人と出会うことができました。以前だったら、つらい時に頼れる人がいませんでしたが、いまの僕には頼れる人がいます。また当時は気づかなかったけれど、僕を支援してくれる友達の存在も心強いです。

9000人もの方が共感してくれて、署名してくれたことで、僕の思いをわかってもらえたと感じました。本当に感謝していますし、やってよかったと思っています」