マーケターにとって、時代の変化や消費者の変化を掴むことは必須。1990年代後半に大ヒットした「セシルマクビー」や、2018年に女性にも大ブレークした「ワークマン」を事例に変化の掴み方について考えます。

マーケターが必ず押さえるべき“変化”

会議や打ち合わせの場では、よく「変化する消費者と向き合う」といった言葉が飛び交います。「消費者はどんどん変化する」は、マーケティング鉄則のひとつといえます。

でも、何をもって「変化」というのでしょう? 具体的に詰めないと、共通像が描けません。みんながそれぞれのイメージを持ち「同床異夢」となってしまいそうです。

今回は衣服を中心にしたファッションブランドで考えてみましょう。変化のなかでも、とくに重要な「時代の変化」「消費者の年齢の変化」「消費者のステージの変化」の3つにスポットをあてます。

まずは時代の変化。たとえば昨年、「平成の歌姫」と呼ばれた安室奈美恵さんが引退しました。彼女は1977年9月生まれだそうです。筆者が仕事で接する相手には、同年代の女性が何人かいます。

そこでこんな一覧表を作ってみました(図表1)。進学や就職、そしてファッションの好みは人それぞれなので、モデル例としてお読みください。

流行に左右されるタイプ、されないタイプがいますが、「こんな時代だった」の目安にはなると思います。

セシルマクビーは、なぜ大変身できたか

安室さんが大ブレイクしたのは18歳の時です。ファッションセンスや生き方に同世代の女性は影響を受けました。その後、派生的なトレンド“ギャルブーム”も起きています。

安室さん人気が不動となった1990年代後半から、ギャルが好むようなファッションも人気となり、ファッションビル「渋谷109」に入るブランドが、“マルキューブランド”と呼ばれました。その代表格が「CECIL McBEE(セシルマクビー)」です。

筆者は1990年代後半から2000年代前半まで、トイレタリー・化粧品メーカーで仕事をしていました。1997年か1998年、撮影現場で女子高校生のモデル2人(ともに高校3年生)と、こんな会話をしたことがあります。

「最近、セシルマクビーって流行っていますよね。どう思いますか?」
「ああ、セシルは結構いいですよね。大好きです」

なぜ20年後も覚えているかというと、〈そうか、もう「セシル」って縮めて呼ぶのだな〉と感じたからです。この会話が同ブランドへの関心を高め、その後、何度も取材しました。実はブランドを運営する会社「ジャパンイマジネーション」は、戦後すぐに焼け跡の新宿で誕生した老舗婦人服店という出自にも興味を持ちました。

それまで、重衣料が得意なブランドだった「セシルマクビー」は路線を変え、当時「カジュアル、エレガンス、セクシー」の3方向で展開しました。とくに肌を露出するけど下品さのないセクシー服が大人気となりました。時代の変化をいち早く取り込み、マーケティングに成功したのです。