“生きがい”の準備は、退職を迎える前に
充実した人生を送るにあたって、生きがいは欠かせない。セカンドライフも20年、30年となれば、気ままにのんびり過ごすには長すぎる。地元地域での社会活動などはシニア世代の生きがい、やりがいを支える重要なものだろう。しかしそれについて、考えさせられるデータがある。
内閣府「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査」によれば、「住んでいる地域での社会的活動」に関わっていない人が約7割にも上った。さらに男性未婚と男女既婚(配偶者と離別)では「特に活動はしていない」 が8割強になるという。
現役のうちは仕事が忙しく、地元と関わりを持つ機会がなかなかないという人は多い。しかし退職したからといって、急に地域活動に参加できるものでもない。セカンドライフをどう生きるか。それは現役世代こそが考えるべき宿題だ。
延びる健康寿命。“年金戦略”も重要に
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命。国の発表によれば、2016年時点で男性が72.14年、女性が74.79年になっており、その延びは平均寿命の延びを上回っている。
元気な期間が延びれば、それに伴いお金の備え方も変わってくる。高齢者の家計の基礎となる公的年金について、受給開始時期を繰り上げ、繰り下げできることを知っている人も多いだろう。具体的には、原則65歳に支給が開始される老齢基礎年金について1カ月繰り下げるごとに0.7%増額される。最大70歳まで繰り下げると、「0.7%×60カ月」で42%の増額である。
いつ受給を開始すれば得かは、もちろん個人の寿命ほか条件しだいだ。一般に、ゆとりある老後の生活を送るには公的年金だけでは足りないといわれている。そのほかの収入や保有資産を見極めながら、年金受給についても戦略性が求められるといえるだろう。
気になる課題は「75歳」までに片付ける
最近のシニアは、驚くほど若い。これは実感だけでなく、データでも証明されている。国が2016年に実施した65歳以上のシニアの新体力テストの結果は男性・女性ともに10年前を上回った。では、介護が必要になるのはいつごろからか──。その分岐点は「75歳」にあるようだ。「65~74歳」と「75歳以上」で、それぞれ、被保険者のうち要介護認定を受けた人の割合を比較すると、「65~74歳」の要介護認定割合は2.9%であるのに対して、「75歳以上」は23.5%と、実に8倍以上増加している計算だ。遺言を書く、住環境を見直す、断捨離をするなど老後に向けてやるべきと考えている課題があるなら、75歳がそれを実行する一つの節目になるだろう。
元気な人しか入れない住み替え先がある
高齢者住宅には「入居要件」があり、希望すれば誰でも入居できるというわけではない。例えば、費用負担が比較的低い特別養護老人ホームは、原則として要介護度3以上が対象で、在宅介護が難しいなどの事情が勘案される。
一方、入居時に元気な人しか入れないサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームもある。こうした住まいは一般的に居室面積が広く、部屋に施錠ができるなどプライバシーが守られており、暮らしの自由度が高い。住み替えの可能性があるなら、早いうちに検討しておいたほうがいい。
このほかにも、高齢者住宅はその運営主体によって介護保険の使い方やサービス内容、初期費用などにかなり幅がある。