仕事には女も男もないと思って取り組んできた。会社を創業したときも事務所に寝袋を持ち込んで徹夜で仕事を続けるモーレツな働きぶりだった。ところが出産してみたら思うようにいかず戸惑いっぱなし。ママ社員の現実を知った今は、新しい働き方も提案する。

初年度売り上げはたったの90万円

ベンチャーを立ち上げる時の怒涛(どとう)の忙しさには女も男もない。山田メユミさんは、1999年に「@cosme」を運営するアイスタイルを起業してからの5~6年間、ところどころ記憶が飛んでいるほど目まぐるしい日々を送ったという。

アイスタイル 取締役 チーフ クオリティ オフィサー(CQO)山田メユミさん

「毎日、歯を食いしばり必死になったことしか覚えていません。ストレスはお酒で発散し、うまくいかないときは人に隠れて悔し涙を流したこともあります」

創業準備の頃はまだ会社に勤めていた。知人から「来年取り壊すからタダでいい」と借りたビルの一室で、終業後から朝まで作業を続けた。スーパーのレジ袋に着替えを入れて銭湯に行き、寝袋で仮眠を取る、そんな日々。

まだ日本では珍しかったコスメ専門サイトの企画を面白がり、コンサルタントやエンジニアがボランティアで加わった。初代@cosme編集部は、それまで山田さんが送っていたメルマガの読者で構成。女子学生や会社員10人ほどが手弁当で手伝ってくれた。

「サーバーも借り物、労力もボランティアのないない尽くし。近所の会社が引っ越すと聞けば、みんなで机や椅子をもらいにいきました(笑)」

サイトをオープンすると予想以上に反応がよく、サーバーの容量がすぐに足りなくなり、常にパンク状態。クレームが入ると、サーバーをちょっと増強するという繰り返し。それなのに初年度の売り上げはたったの90万円だった。お金になったのはアンケートの依頼が1件だけ。それも出資者からもらった仕事だった。