トップセールスの中には、弁が立つタイプではない人が意外と多い。彼らに共通するのは、自分本位でしゃべらず、お客さまの立場で物事を受けとめる姿勢。そのトーク術には営業職に限らず、コミュニケーション力をアップさせるヒントが詰まっている。

デキる営業はすぐには売らない

「営業力とは、『あなたから買いたい』と言わせる人間力」と定義するのは、営業力強化事業などを手がけるプラウド代表取締役社長の山本幸美さん。商品情報はインターネットなどで簡単に手に入る時代。優れた商品やサービスを提供する同業他社が多いうえに、顧客の目も肥えてきている。「だからこそ、誰が話を聞いてくれるのか、誰が契約後に相談に乗ってくれるのかが重視されるようになっています。お客さまから『よい未来を一緒につくってくれそう』と思ってもらえるかどうかが、営業トークのポイントです」

プラウド 代表取締役社長 山本幸美さん

営業トークでベースになるのは、相手に「1人の人間として大事にされている」と感じさせること。「この『自己重要感』を感じてもらえる会話をいかにちりばめられるかが大切です」

今、営業に求められているのは、顧客に寄り添い、悩みを一緒に解決していけるスキル。“自分が主役”では相手の心をつかめない。「すごく饒舌(じょうぜつ)なのに全然成績が上がらない人にもたくさん会ってきました」という山本さんは、「デキる営業はすぐには売りません」と言い切る。

「まず、お客さまの課題や不安、その商品に興味を持った背景を把握します。聞く力がとても大切。“2対8の法則”というものがありますが、営業が2割、お客さまが8割くらいの配分でトークを組み立てると、満足度が高いという傾向があります。会話というのは、話しているほうに主導権があると思われがちですが、営業のシーンでは聞き手に移ってくることがよくあります。お客さまが心を委ねるようになり、『聞いてもらって良かった』という気持ちになる。『また相談に乗ってもらえますか』と言われるようになれば、どんどんご縁がつながっていきます」