介護付き有料老人ホーム抑制のため
高齢者向け賃貸住宅が激増中

自宅での生活が難しくなったシニアの住み替え先として、高専賃(高齢者専用賃貸住宅)が注目されている。高専賃とは、おおむね60歳以上のシニアを対象にした賃貸住宅である。これまで、火災や孤独死を恐れられて賃貸住宅の入居を拒まれることも少なくなかった高齢者だが、その対策として高齢者居住法に基づき、2005年12月から高専賃が制度化された。

敷金・礼金程度の初期費用で入居可能なうえ、自由に入退去できる気軽さも魅力だ。貸し主は都道府県に登録し、設備や家賃、介護サービスの有無などの情報を公表する。その数は06年から07年までで4倍になり、この1年でさらに倍増。08年5月現在、全国に約800カ所ある。登録件数の多い都道府県別のトップ3は、神奈川県、大阪府、北海道となっている。

高専賃では、入浴・排泄等のケアは半数以上が対応不可
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高専賃では、入浴・排泄等のケアは半数以上が対応不可

急増の背景には、自治体による介護付き有料老人ホーム(特定施設)の総量規制がある。介護保険の給付費を抑制したい自治体がホームの新規開設にブレーキをかけているため、代わりに手がける事業者が増えているのだ。さらに国策としての療養型病床の削減もあり、退院患者の受け皿としても期待されている。診療所や訪問看護ステーションなどを併設し、医療行為の必要な要介護者に対応しているところもある。

ただ、バリアフリーなどの要件が一切ないため、必ずしも高齢者が住みやすい物件ばかりとは限らず、設備も付帯サービスもさまざまだ。入居しやすさが売りのはずだが、最近は高額な一時金をとる物件も出ている。

高専賃を管轄する国土交通省の調べによると、8割の物件で緊急時対応サービスが実施され、6割で食事が提供されている。訪問介護事業所などを併設して、介護サービスを提供できる物件も5割近くある。少数派だが、居室面積など一定の基準を満たした「適合高専賃」となったうえ、介護を提供できる人員体制を整えて、介護保険の「特定施設」となっている物件もある。

ちなみに「適合高専賃」以外は、食事、介護、家事援助、健康管理のいずれかを提供していれば、有料老人ホームとして届け出が求められる。だが、都道府県によって対応に差があり、見た目にもホームとの違いがわかりにくくなっている。ただ、高専賃の場合は「賃貸借契約」に限られ、「利用権契約」の多いホームと比べ、事業者が倒産しても住む権利が保証されている。

とはいえ、要介護度が重度化すると、「特定施設」以外の物件では、介護保険だけでは対応できない場合もある。そのため併設する訪問介護事業所が独自の費用体系を設けて、介護保険外のサービスを提供しているところもある。だが、費用が思いのほか高額になる場合もあるので注意が必要だ。重度化したり、認知症になったりすると介護施設に住み替えざるをえない例もあり、心身の状態の変化にどこまで対応できるのかも確認しておくべきだろう。