「捕らぬタヌキの皮算用」とはこのことか。9月下旬に行われる自民党総裁選は、告示前だというのに、既に安倍晋三首相(党総裁)の3選を前提にした人事情報が飛び交っている。安倍氏のささやきが流布しているものもあれば、単なる観測気球もある。浮ついた永田町情報の中から、説得力のあるものをよりすぐり、「どこよりも早い安倍3選後の人事情報」を紹介しよう――。
2018年8月03日、河村建夫宇宙・海洋開発特別委員会委員長(中央左)から提言書を受け取る安倍晋三首相(同右)。左端は小泉進次郎スペースデブリ法制に関するWT座長(写真=時事通信フォト)

信賞必罰の首相方針に「猟官運動」がインフレ化

安倍氏は今回の総裁選を非常に重視している。権力闘争の厳しさを誰より知っているため、少しでも力を緩めると足をすくわれると思っているからだ。そのあたりは既報の「"だったら密談でやる"安倍首相の開き直り」で詳しく紹介しているので参照いただきたい。

その厳しさは、総裁選後の人事にも表れる。信賞必罰。応援してくれた人物には厚遇し、応援しなかった人物は干す。その大方針は揺るがない。

7月26日付の読売新聞によると、安倍氏は6月18日夜、東京・赤坂の日本料理屋で岸田文雄氏と会った際「(総裁選に)出たら、処遇はできないよ。私を応援してくれる他の派閥に示しがつかない」と、恫喝に近い形で不出馬を迫った。この通告が決め手となって岸田氏は7月24日、「不出馬、安倍氏支援」を表明している。

安倍氏は、知人を厚遇して「お友達内閣」などと批判されるが、厳密にいうと親しい議員を重用するのではない。自分のために働いた議員を登用するのだ。

今、総裁選で安倍氏を推すことが決まっているのは安倍氏の出身派閥・細田派と二階派、麻生派の「主流3派」と、安倍氏支援を打ちだした岸田派の4派所属議員が、人事を心待ちにすることになる。もはや安倍氏を支持しただけではなく、「より早く、より深く」安倍氏を支援しなければ重要ポストは得られないということで、猟官運動のインフレが進んでいる。

一方、玉砕覚悟で安倍氏に挑む石破茂元幹事長率いる石破派のメンバーたちは、当分冷や飯を食う覚悟を決めている。