「企画が出てこない」「考えられない」「うまく書けない」。そんな悩みの原因は「面白い」という言葉に縛られているからだ――。これまで数々のヒットメーカーを取材してきたブックライターの上阪徹氏はそういいます。上阪氏が「面白いものを作ろうとする前に『面白い』とは何かを知るべきです」と指摘する理由とは――。

※本稿は、上阪徹『企画書は10分で書きなさい』(方丈社)の内容を再編集したものです。

自分本位な「面白い」に要注意!

企画を考えるとき、最も危険な言葉があると思っています。それは日常的に頻繁に使われる、この言葉です。

写真=iStock.com/ismagilov

「面白い」

みんな当たり前のように「面白い」という言葉を使います。企画でも、「面白い企画を出さなければ」と考えている人が多いでしょう。しかし、この「面白い企画」こそが、企画の作り手を苦しめ、あるいはうまくいかなくしていると思うのです。なぜなら、まったくわけのわからない言葉だからです。

私は文章をスムーズに書くための本も書いていますが、そこでも強調するのは、この「面白い」の危うさです。例えば、面白いブログを書きたい、SNSに面白い投稿をしたい、面白い話を文章にしたい、と考えている人は少なくありません。

ところが、実は支持してもらえなかったりすることは少なくありません。それは、多くのケースで、こういうことから起こります。

「自分が面白いと思っていることを書いている」

注意しなければならないのは、「自分が面白いことが、他の人にも面白いわけではない」ということです。

ターゲットを絞り込む

例を挙げると、優れたリーダーのマネジメント手法は管理職の人にとっては垂涎(すいぜん)の「面白いこと」ですが、新入社員にとっては興味関心の外でしょう。

映画好きの人のマニアックな映画観は、年に2~3本、話題作しか見ない映画ファンにとっては、まったくついていけないものだと思います。

面白いというのは、誰にとっても面白いとは限らないのです。

面白いの危険
  
自分が面白いと思うことが、他の人にも面白いとは限らない

では、どうするのかというと、ここで有効になるのが、「ターゲットを絞り込むこと」なのです。

私が講演などでよく申し上げている話があります。会場が真っ暗闇になっていて、誰が座っているかわからない講演会場で、みなさんは面白い話ができますか、と。

もしかしたら、80代の高齢男性ばかりかもしれない。17歳の女子高生かもしれない。小学校低学年の子どもたちかもしれない。

それぞれ興味関心も異なります。物事への理解も違う。だから、誰がそこに座っていかがわかれば、彼らに合わせて話を考え、展開していくでしょう。逆にわからなければ、何を話していいのか、どう話していいのか、わからなくなる。