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企業や団体、公的機関など国内で指定されている「法人」は現在、およそ470万件。13桁の番号から法人名を検索できる国税庁の法人番号公表サイトにこの番号を入力すると、実に恐ろしい名前の法人が登場する。
その名は「株式会社 悪の秘密結社」。ご存じの人も多いと思うが、ヒーローショーに特化した、福岡市に本社を置くベンチャー企業である。天神のビルの一室に構えたオフィスを訪ねると、社長の「ヤバイ仮面」こと笹井浩生さん(28)が、実に礼儀正しく迎え入れてくれた。

※当記事はqBiz 西日本新聞経済電子版の提供記事です

悪の秘密結社、組織はホワイト

「日本の法人で、『悪』の字を文字通り『悪い』という意味で名前に入れているのは、うちだけなんです」

記者会見場にさっそうと登場するヤバイ仮面

先の国税庁のサイトで検索すると、「悪」でヒットする法人は6件。地名のほかは「悪臭対策」の団体など。確かに「悪い」のはこの秘密結社だけだ。

2016年3月に福岡市東区の自宅で創業した笹井さん。起業前は時計店で接客業に携わり、次に広告代理店で営業次長まで務めた。高校時代、ヒーローショーのアルバイトでステージに立ったときの感動が大人になっても消えず、胸の内に秘め続けたヒーローへの憧れが、普通のサラリーマンを最終的に「悪の道」へといざなった。

起業から2年。社員3人のヒーローショー専門の会社だが、顧問弁護士とも税理士とも、社会保険労務士とも、すべて契約している。小さな会社なのに意外? いや違う。

「悪の、と名乗っている会社が本当に悪かったら絶対ダメですよね」

そう、悪の秘密結社は「ホワイト」なのだ。

5月下旬の月曜日の朝、悪の秘密結社を率いる「ヤバイ仮面」は、福岡市・天神のオフィスビルの会議室前で出番を静かに待っていた。舞台は、ガンツ不動産(同市)が新たに始める聴覚障害者向けの手話通訳サービスの発表記者会見だ。

扉の外で出番を静かに待つヤバイ仮面。右手前はガンツ不動産のマスコットキャラ「たねぱん」(後ろ姿)

勢いよく会場に飛び込んだヤバイ仮面は悪徳不動産を演じ、そして最後はきっちり撃退された。過酷な全身スーツだが、「気温よりも、湿度がつらい。高いとあっという間にやられます」と笹井さんは汗をぬぐう。

そんな体力勝負の場面も多いが、社名とは裏腹に「ブラック」ではないという悪の秘密結社。では、具体的に給与や労務管理はどうやっているのだろうか。

ヒーローショーや演劇、芸能関係の業界は、一般的に収入が不安定とされている。舞台への出演ごとにギャラが支払われ、その額にもケースごとに大きな差があるからだ。

悪の秘密結社は、固定給だ。正社員に登用の場合は、手取りで18万円から始まる。下準備も稽古も道具製作も当然と言えば当然だが、すべて業務に位置付けている。職業柄、土日の出勤が多いが、平日に代休を確保して週休2日を徹底している。

BtoB(企業間取引)の現場で鍛えられたという笹井さん。ヒーローショーの会社としては珍しく、社員には名刺の渡し方を教え、「3コール以内に取るのは当たり前」と電話の取り方の研修もやった。笹井さんは言う。「ヒーローショーをビジネスとして成立させ、雇用を生むのも大きな目標。会社として、演者を社会に通じる優秀な人材に育成していきたい」