「先見力」のある人は、どんな本を読んでいるのか。筑波大学の掛谷英紀准教授らがAIでアマゾンのレビューを分析したところ、先見力のある人はコミック、ラノベ(ライトノベル)を含むフィクションをたくさん読んでおり、先見力のない人は人文・思想書、ビジネス・経済書、科学書などをよく読んでいることがわかりました。どういうことなのでしょうか――。(第1回、全4回)

※本稿は、掛谷英紀『先見力の授業 AI時代を勝ち抜く頭の使い方』(かんき出版)の一部を再編集、加筆したものです。

「コミック」VS「思想書」先見力のある人がよく読むのはどっち?

われわれの研究グループでは、アマゾンのブック・レビューに基づく先見力のある人物とない人物の特徴分析という研究を行っています。この研究では、評価の趨勢が時がたつにつれて大きく転換した書籍について、転換期よりも前の時点でその書籍のレビューをしているレビュアのうち、転換後に趨勢となる評価(星の数)のレビューをしていた人を先見力がある、逆に転換後に劣勢となる評価のレビューをしていた人を先見力がないと定義しています。

たとえば、2011年に出版された武田邦彦著『2015年放射能クライシス』(小学館)という本には、2015年には放射能で日本に住めなくなると書かれています。出版当時は大きな支持を受けましたが、2015年が近づきその予測が間違っていることが明らかになると、低評価が趨勢になりました。武田氏を支持(高評価)していた多数派に惑わされず、早い段階から正しい判断を行っていた人を、先見力のある人と定義するわけです。

図1は、先見力のあるレビュア、先見力のないレビュアのそれぞれについて、アマゾンでレビューしていた商品をカテゴリごとに集計し、それを割合として示したものです。ここでクイズです。

図1の上の円グラフと下の円グラフ、どちらが先見力のあるレビュアのものでしょうか?

この答えは、多くの人の予想に合致していると思います。上が先見力のある人、下が先見力のない人の分布です。先見力のある人の方が本をよく読み(正確にいうとレビューし)、先見力のない人はDVDをよく視聴する傾向が見て取れます。これはある程度予想可能な結果だと思います。

予想外に目立っているのが、先見力のある人が洋書をよく読んでいることです。レビューした商品の5%が洋書というのは、かなり高い割合です。ちなみに、先見力のない人の場合、0.2%でした。やはり、外国語を自分で直接読んで情報をとれることは、先見力を養うことに貢献するようです。