企業収益の改善で、「NPS(ネット・プロモーター・スコア)[R]」という指標が注目されている。これは顧客に対し、「0~10点で表すとして、○○を友人や家族にすすめる可能性はどのくらいありますか?」と質問し、その製品やサービスに対する顧客ロイヤルティ(忠誠度)の度合いを測るものだ。回答結果は、10~9点と回答した顧客を「推奨者」、8~7点を「中立者」、6~0点を「批判者」として3つのセグメントに分類する。「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いたものがNPSのスコアとなる。
これまでアップル、スターバックス、ソフトバンクといった企業が、NPSを導入し、収益を劇的に改善させてきた。非常にシンプルな調査方法だが、それだけ誤解も受けやすい。NPSを開発したベイン・アンド・カンパニーのパートナー、リチャード・ハセラル氏に、日本におけるNPSのエバンジェリストの遠藤直紀氏が、その正しい使い方を聞いた。
顧客ロイヤルティと最も相関の強い指標
【遠藤直紀(ビービット社長)】NPSという指標が生まれた背景と、その使い方について簡単にうかがえますか。
【リチャード・ハセラル(ベイン・アンド・カンパニー パートナー)】NPSは2003年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に発表され、脚光を浴びました。当時多くの経営者は顧客エクスペリエンスの重要性については認識しているものの、どうやったらそれを向上させることができるのかについて悩んでいたのです。一方で、顧客部門はなおざりにされて組織の片隅に追いやられ、そこからレポートや情報が上がってきても実際の計画や行動につなげられるような知見はありませんでした。まずは顧客が自分たちの商品やサービスをどう感じているのかを測定する必要があるということで開発されたのがNPSです。
【遠藤】わたしはNPS開発者で『ネット・プロモーター経営』(プレジデント社)の共著者でもあるフレッド・ライクヘルド氏にも会いにいったことがあるほどNPSという指標を高く評価していますが、開発当初から20年近くがたっています。この間指標はどんな進化をとげてきているのでしょうか。
【ハセラル】NPSはたんなるスコア(指標)ではなく、システムとして経営の中核に組み込まれることでさらに効果を発揮しています。このシステムは、これまでの成功事例を調査し、最も効果的な使い方を定型化したものです。