人口減少などによって近い将来、逆風が吹くと予想される自動車販売業界。その中にあって業績を上げて注目されているのが石川トヨタだ。従来の「訪問型営業」から「来店型営業」に大きくシフトチェンジし、新たな顧客を数多く獲得する体制を整えている。それを可能にしたのがビジネスのデジタル化だ。石川トヨタが取り組むビジネス革命とは――。

成功していた「訪問型販売」が通用しない

石川県を商圏としてトヨタ自動車(以下、トヨタ)のクルマを販売する石川トヨタ自動車(以下、石川トヨタ)は一昨年、創業70周年を迎えた。過去のビジネスを振り返ると、石川トヨタの架谷洋司社長が就任した2005年当時は、業績低迷の真っただ中にあり、「訪問型販売」への限界を感じていた。「訪問してもお客様に会えないなど効率が非常に悪く、低CS・低ES・低収益の三重苦でした」と架谷社長は話す。

架谷洋司・石川トヨタ社長

苦闘する石川トヨタに一筋の光明が差したのは2005年のこと。新たに開設した「レクサス金沢御影」が成功を収めたのだ。レクサスがほかの店舗と大きく異なったのは「来店型販売」を重視し、営業担当者が主に店舗で顧客と接すること。この成功を機に、石川トヨタは来店型販売へとシフトするため店舗リニューアルを進めていった。

キーワードは「理想の店舗づくり」。(1)上質な店舗ハード、(2)身だしなみと礼儀作法、(3)おもてなし、(4)チームワーク、(5)提案力、の5つのポイントを必要条件とし、様々な取組みに着手した。その結果、お客様満足度が飛躍的に向上し、業績も好転。2017年3月期決算では過去最高益をマークした。

そして、石川トヨタが次のステップとして取り組んでいるのがビジネスのデジタル化だ。そのきっかけの1つが、閲覧者にとって魅力に乏しい自社のWebサイトだった。

2016年5月にWebサイトの刷新に取り組み始め、同年10月末にリニューアルしたWebサイトを公開した。新しいWebサイトのコンセプトはバーチャル店舗。営業担当者の顔写真を載せたり、店舗スタッフのブログを掲載したりすることで実際の店舗の様子が閲覧者に伝わるように工夫した。すると、Webサイトを閲覧した人たちから「アットホームで楽しそう」「こんな店舗でクルマを買いたい」などといった好意的なコメントが届くようになった。

Webサイトのリニューアルから1年経った時点のアクセス数は、リニューアル前の約3倍に増えている。しかも、検索エンジンの検索結果のリストのうち、インターネット広告を含まないオーガニック検索によってWebサイトを訪れたケースが多く見られる。つまり、新規見込み顧客が石川トヨタのWebサイトを閲覧している可能性が高いのだ。

「実際、U-Car(中古車)販売ではWebサイトを起点として購入に結びつくケースが増えてきました」(架谷社長)。

新しいWebサイトはクルマの販売だけではなく、新卒採用でも効果を発揮している。会社説明会や面接などで学生と話すと、「Webサイトを見て、石川トヨタは楽しそうで活気がある会社だと思った」などという好意的な感想を聞くことが多くなったのだ。