自然エネルギーの「地産地消」の輪を広げる
日本の自然エネルギーの導入は、大手電力会社の基幹送電線の未開放や、風力発電の「環境影響評価(アセスメント)」の長期化といった「政策障害」によって遅れている。相変わらず、政府が原子力発電を「ベースロード電源」と位置づけているために自然エネルギーの割合が抑えられる。
しかしながら、一方で自然エネルギーの「市民・地域共同発電所」が目覚ましい勢いで増えている。市民が出資し、発電収益の一部を地元に還元する国内の市民発電所は、昨年1月時点で1000基を超えた(NPO気候ネットワーク調査)。都道県別では、1位長野353基、2位福島92基、3位東京83基……とつづく。日本の自然エネルギーは「民高官低」で市民がけん引しているといえるだろう。
多くの市民発電所は電力の「地産」を実現した。FITの利用で20年間、売電ができる。しかし、小さな発電所がたくさんできて大手電力会社に電力を売るだけでは本来的な意味での地域への還元効果は薄い。問題は、電力の「地消」なのである。100%国産の自然エネルギーを使って、地域が自立するには「地産地消」の輪がつながらなくてはならない。
地消、つまり地元の企業や一般家庭の需要家にきめ細かく対応し、電力を売ることは容易ではない。この難題に取り組み、成果をあげているケースがある。
神奈川県小田原市の「小田原箱根エネルギーコンソーシアム」を紹介しよう。
東日本大震災後、小田原市ではエネルギー地産の検討が始まり、2012年に市内24事業者の出資で太陽光発電をメインとする市民発電会社「ほうとくエネルギー(株)」が誕生した。ほうとくエネルギーは、市民ファンドからも出資を募り、メガソーラー発電や屋根貸し太陽光、0円ソーラーなど、トータルで1.2メガワットの発電所を稼働させている。
同社の志澤昌彦副社長は、以前、筆者の取材にこう述べた。
「4億円の事業費のうち1億円が市民ファンド。資本金があったので3億円まるまる借り入れたわけではありませんが、出資に対して配当は2%です。定額預金や定期預金よりはこっちのほうがいいので資産の移し替えをしている人もいます。最初は万一発電が止まったら、キャッシュフロー面で会社が危機に陥るので、随分悩みました。でも、山林の地主さんの協力が得られて大規模ソーラーのメドが立ち、事業化が進みました」