レセプト分析で医療費が抑制できる
ITによる時代の変革が、あらゆる分野で進んでいる。健康・医療の分野にあっては「データヘルス」という試みが動き出した。ここでいうデータとは、健康診断(健診)の結果や医療費の請求書であるレセプト(診療報酬明細書)などの健康医療情報である。2008年の特定健康診査・特定保健指導の導入、レセプトの電子化に伴い、デジタル化された健康医療情報を健康増進および病気の予防、さらに急増する医療費の抑制に活用しようというものだ。
すでに、健康保険組合や自治体、企業などで多くの取り組みが行われているが、その現場はなかなか見えにくい。1月18日、東京・文京区の東京ドームプリズムホールで厚生労働省が主催する「データヘルス・予防サービス見本市2017」が開催された。東京会場には31組の出展者が集合し、データ分析や生活習慣病の重症化予防、職場環境の整備、わかりやすい情報提供などをテーマに、各ブースで展示、説明が行われた。
実はこうした背景には、アベノミクスの成長戦略に掲げられた「国民の『健康寿命』の延伸」がある。いまから7年後には65歳以上の高齢者人口が約3600万人、人口比で3割に達する。さらに団塊の世代(1947~49年生まれ)の全員が75歳以上、つまり「後期高齢者」となることから「医療費の2025年問題」が持ち上がっている。政府、自治体が手をこまねいていると、医療費の増加が社会保障制度を圧迫しかねない。民間企業を巻き込んだ速やかな対策が講じられる必要がある。
そのスタートともいうべきものが「データヘルス計画」だ。厚労省は15年度から、すべての健康保険組合に対して計画の策定と実施を求めた。前述の健康医療データの分析にもとづき、保健事業の立案、実施、評価・検証、改善のPDCAサイクルによって効率的かつ効果的に成果を出す。その狙いは高齢化や生活習慣病の増加に伴う医療費の抑制にほかならない。
この分野に強いデータホライゾン(本社・広島市)も会場内にブースを設けた。レセプト分析に関して、医療費グルーピング技術と傷病管理システムという2つの特許が売りだ。レセプトは本来、診療報酬明細なので傷病ごとの医療費は把握できない。だが、同社東日本営業部の神代輝明課長によれば「傷病名から診療行為と医薬品を、ひも付きにすることで医療費を算出、病気の重症度も判定できます。例えば、糖尿病患者なら病状が重くならないように適切な指導を行うことで、腎機能が悪化するのを抑え、インスリンや人工透析などの治療を回避することが可能です。人工透析を10人回避できれば約2億7500万円の医療費削減につながります」と話す。