親が亡くなったとき、「申請しなければもらえないお金」があることは、ご存じだろうか。たとえば国民健康保険の「葬祭費」は申請がなければ1円も出ないが、申請すれば自治体によって1万~7万円が支給される。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏が、「親が亡くなる前後に知っておきたいお金のこと」を解説する――。
親が亡くなる前に知っておきたいお金のこと
高齢化が進む日本。
9月17日に総務省が発表した人口推計では、90歳以上の人口が206万人、総人口に占める65歳以上の割合は27.7%と過去最高になりました。それにともなって亡くなる人も増えており、2016年度の年間死亡者数は約130万人でした。
読者のなかにも、親の健康状態を心配している方がいると思います。あまり考えたくないことですが、高齢であれば、たとえ今は元気でも、ケガや病気で突然倒れてしまうリスクがあります。すぐに亡くなってしまうこともあるのです。
本稿では「親が亡くなる前後に知っておきたいお金のこと」を3つ取り上げます。具体的には(1)葬儀のこと、(2)健康保険のこと、(3)年金のことです。
特に、(2)健康保険や(3)公的年金の手続きには期限がありますので、注意してください。また、こちらから請求しなくてはならないケース(未支給年金や払い過ぎた保険料の払い戻しなど)もあります。知らないと損をしてしまうかもしれません。
▼葬儀 親が互助会に加入しているのを知らずに大損
まずは(1)葬儀についてです。
「親が希望する葬儀の様式は何か」「仏教の場合、戒名はどうするか」「誰を呼ぶか」など、いくつか生前に確認したいことがあります。親と別居している場合には、お盆や年末年始などの帰省の際にぜひ話してみてください。
もうひとつ重要なポイントは「互助会に加入しているかどうか」の確認です。
互助会とは、冠婚葬祭を催している事業者が、積み立てや一括払いで、葬式や結婚式などにかかる費用を前払いする仕組みのことです。加入者の多くは、毎月1000円~5000円を支払い、20万~50万円程度を目安に積み立てているようです。積立金は、葬儀の費用の一部にあてられます。
互助会は公的なサービスではなく、冠婚葬祭の事業者に前払いする仕組みです。ただ、将来を不安に思って、かなりの人が互助会に加入しているようです。問題は、加入者の名義が故人だった場合、子供などの遺族が加入の事実を知らなければ、積立金がムダになってしまう点です。事業者が用途を制限しているため、互助会が提携していない斎場で葬儀をしてしまった場合、「積立金は使えません」というケースもあります。葬儀を終えてから解約しても、数万円単位の手数料が発生することが多いようです。
加入の有無を直接確認できない場合には、契約書を探すか、預金通帳などで定期的な引き落としがないかどうかをチェックしましょう。