このところ中国の大富豪が、次々と共産党に対して忠誠を表明している。秋の共産党大会を控え、当たり前のように思えるが、あらゆる企業のトップたちが、そのように表明しているわけではない。表明する、しないの違いは何か。その違いに目を向けると、中国の最重要海外戦略である「一帯一路」との関連が見えてくる。

有力トップが次々「党」の支持を表明

最近、中国の大富豪たちは、われ先に共産党に対して忠誠を表明している。対外大型投資で有名な複数の企業代表が、断固として中共中央の政策を支持する意向をメディアを通じて発表したのだ。

7月29日、復星集団(フォースン・グループ)の郭広昌董事長は、パリから上海に戻る便の機内で、「(7月14日から15日開かれた)今回の全国金融工作会議と最近の対外投資、中国金融の混乱を整えることおよび規範化することは、非常に必要でありかつ時宜を得たものだ」と語った。巨大な投資を行っているから、飛行機の着陸も、もどかしかったはずだ。

不動産大手・大連万達集団(ワンダ・グループ)の会長で、中国の長者番付でトップに君臨する王健林代表は、「積極的に国家の呼びかけに呼応し、早急に主要な投資を国内に呼び戻す」ことを表明した。しかし、王代表はその少し前には、「みずから苦労して稼いだ資金は、投資したいところに投資する。誰にも邪魔はされない」と語っていたのだ。

海外で大型のM&A(企業買収)を進め、最近、ベールに包まれた株主提案権で西側メディアから注視されている海航集団(HNA・グループ)は、まだ直接的な意思表明はしていないが、公式ホームページのトップ画面に「初心を忘れず、党に従って歩む」という一文を掲載し、さらに「民間企業の空に党旗をはためかせよう」という文章まで載せ、「党に従って歩む」姿勢が画面上に踊っている。

中国では企業規模がいかに大きかろうと、党の呼びかけに従わないでいることはできない。たとえば安邦保険集団の呉小暉董事長は、先ごろ、「安邦が海外に投資した資金は、国際マーケットを通じて調達したものであり、政府が保有する外貨は1銭も使っていない」と語った直後、呉董事長は「個人的な理由でその職務を遂行することができなくなってしまった」と会社のHPに書かれ、辞職したと思われる。

「非理性的」な海外投資とは何か

中国政府で海外投資を監督管理する商務部(省)などは、2016年末から「非理性的」な海外投資に「急ブレーキ」をかけてそれらを抑制した。その効果は絶大で、影響の大きさに国内外の関係者は驚愕したほどだ。商務省の銭克明副大臣は7月31日に記者会見を開き、今年上半期の対外直接投資が前年同期比43%減の3311億元(約5.5兆円、1元=16.45円)だったことを明らかにした。

海外投資プロジェクトのうちのどれが「理性的」で、どれが「非理性的」なのか、その基準はどこに設定されているのか、それはずっと分からないままだった。7月18日になって、国家発展改革委員会の厳鵬程スポークスマンが、ようやく明確な基準を示した。それは「『一帯一路』政策と『国際生産能力提携(国際産能合作)プロジェクト』への投資と経営に対し、政府は特段の支援をする。同時に、関係部門は不動産、ホテル、映画産業、エンターテイメント産業、スポーツ産業などの非理性的な対外投資に対して引き続き規制をかけ、対外投資リスクを防止し、関連企業が慎重な決定を下すよう提案する」というものだった。

これで、状況は明らかになった。商務省の別の部門は具体的なデータを挙げ、今年上半期における不動産、文化、スポーツ・エンターテイメント産業などの海外投資が前年同期比82%減り、対外投資全体の3%に押さえられたことを明らかにしている。これらの数値から、ここにあげた産業がいわゆる「非理性的」な対外投資であることが伺える。