どうしたら幸せになれるかを考える

(左)経済アナリスト 森永卓郎さん/獨協大学経済学部教授。年収300万円時代の到来をいち早く予測。近著は『消費税は下げられる! 借金1000兆円の大嘘を暴く』(角川新書)。(右)森永さんおすすめの本

理論的には、なるべく無駄のないよう効率的に資源配分するのが経済学です。でも私は、経済学にはもうひとつ大きな柱があると思っています。それは「厚生経済学」。どういった経済状態になれば、人は満足度が高い状態になれるのか。どうしたら人は幸せになれるのかを考える分野です。今、自分が完全に幸せではないと思うのならば、なぜそうなっているのかという観点から経済学を勉強し始めるのが、わかりやすくていいのではないでしょうか。

「なんでこんなにクタクタになるまで働かなければ自分の生活は成り立たないのだろう」「上司の理不尽な要求に応えているのに、なぜ自分の給料は上がらないのだろう」という身近な疑問から、今の経済の仕組みをとらえてみてください。

いきなりケインズ経済理論などと難しいものから勉強しようとしても意味がありません。一番大切なことは、自分の身に降りかかってくるかもしれない問題を解決する知恵を持っておくことだと私は思います。

今回初級本としてお薦めした中でも『お金が貯まる人は何が違うのか?』は、本当にすぐに役立つ“経済の基礎”本です。真面目に働いて得たお金の中から、使う前に決まった金額を天引きで自動貯蓄してお金を貯める。これは実に正しい行動です。お金がある程度あれば、人生の選択肢も増えますからね。でも悲しいかな、今の日本ではお金=神のような風潮もあります。お金がなければ豊かな人生ではないといった空気感がまん延する社会構造はいつ頃から、何をきっかけにもたらされたのでしょうか。

中級本以上では、それを学んでいただきます。新自由主義(グローバリズム)経済の元祖は、私はイギリスのマーガレット・サッチャーだったと思います。彼女はルールメーカーに徹しマーケットに関与しない“小さな政府”をつくりました。そして社会保障をたたき切り、所得の再分配もしないというのがサッチャー改革。これによりイギリスは劇的に経済成長しましたが、劇的に格差も広がりました。これを20年遅れでまねしたのが日本の小泉政権。それをさらに強化したのがアベノミクスだと考えています。目先の富や改革という言葉に騙されてはいけません。経済の正しい知識を身につけ、自分で考える力を養ってください。