『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)の著者で、米国公認会計士の午堂登紀雄さんは、「何かの分野で大成したいと望むなら、今すぐ『いい人』をやめ、変人になれ」と言います。なぜ著者はこんな刺激的なことを言い出したのか。日本実業出版社の販売担当者が午堂さんに直接話を聞きに行きました。書籍未収録の特別インタビューをお届けします――。

他人との摩擦を避けても成果は生まれない

──「成功者には、いい人よりも変人が多い」と書かれていますが、午堂さんの周囲の「変人」はどんな人ですか?

知人の経営者には変人が多いですね。特に他人に迎合することを嫌うからか、「友達なんていらない」という人はすごく多い。ある外食チェーンの創業社長は「おれには友達なんていない!」と豪語しています。あるネット起業家からは「友達がいて、なんか楽しいことある?」とはっきり言われました。まあそんな人だから相変わらず独身なんだよ、と話すんですけど、会社の業績はすごく良くて、年に3棟ぐらいビルを買っています。

午堂 登紀雄さん

僕自身はそういう人生をうらやましいとは思わないけれど、突出した結果を出す人は、普通の人には考えられない信念と価値観を持っていますね。彼らが変わっているのは、自分に対する自信と強い信念があるからです。これだ、と決めたらわき目もふらず突っ走る。そこが普通の人たちともっとも違うところでしょう。

──普通の「いい人」では成果を上げられないものでしょうか?

まず、「いい人」は他人と摩擦を起こすことを避けます。たとえ周囲と違う意見を持っていたとしても、嫌われることをおそれて自分を抑え、隠し、迎合します。そうすれば波風が立つこともなく、「いい人」にとって快適に過ごせるからです。

しかし、ずっとそのままでは、いずれ「あの人、何を考えているかわからないね」と言われるようになり、「いい人」は「どうでもいい人」と化します。そうなってしまうと、会社が新しいプロジェクトなどをスタートするときに声がかからなくなったりして、活躍の場がだんだんとなくなっていく。社内を見渡してみても、アクの強い人物が昇進したり、抜擢されたりしていることが多いはずです。

完璧にこだわり、摩擦をさけたがる

──成果を出すには摩擦を恐れるべきでない、ということですね。

摩擦はむしろ必要悪だと考えたほうがいいと思います。普段から強く自己主張していると「面倒くさいヤツだ」と言われるかもしれませんが、大事な時に「あいつちょっと変わってるけど何かアイデアが出てきそうだから呼んでみるか」ということになる。成果を出すチャンスが巡ってくるんです。ある意味「変わってる人」はほめ言葉とも言えます。

もっとも、主義主張をただわめき散らすのはダメだし、優秀な若手に多い「これ絶対におかしいです! こうすべきです!」と正義正論をむやみに振りかざすのもダメ。うっとうしがられるだけで、意見は通りにくい。「正論」を語るのであれば、現実的具体的な方法の提案もセットで話すことです。さらに「自分にやらせてください」と言えると頼もしく感じられ、「コイツに任せてみよう」という話になる可能性も高くなる。

提案や意見については、「一発OK」をもらいたがる人が多いですよね。意見を少し否定されただけで、まるで人格を否定されたようにへこんでしまう。場合によっては、逆上してしまう。これも良くないですね。完璧にこだわりすぎるのも摩擦をさけたがる「いい人」の特徴ですね。

自分の意見を通したければ、反対する人を説得するだけの根拠とロジックを用意する。プラス、他人の意見を取り入れて、自分の考えをより良くしようとする視野の広さと冷静さも必要です。そのためには、物事に対する自分なりの判断軸、価値観をしっかり持っていないといけない。

ところが、他人に迎合する「いい人」にはそれがないんですね。