「自分で考えろ」と言いたくなるが……
なるべく早くやれ。整理整頓しろ。顧客に寄り添え……。
みなさんの組織内で、上司部下間でこんなコミュニケーションが繰り広げられているのではないだろうか。こうした指示は、いわゆる「忖度」というものだ。『広辞苑』(第6版)には「他人の心中をおしはかること。推察」と書かれている。
上司からすれば、忖度の度合いによって、“できる部下”“できない部下”という評価を下すこともあるだろう。少ない指示でも、自分の言いたいことを推察し、スムーズに動いてくれる。そうした部下は、確かに使い勝手がいいだろう。何度も確認してくる部下に対して、“自分で考えろ”と言いたくなる気持ちもわからなくもない。
また、部下からすると、「上司に何度も確認するよりスムーズに理解しているという印象を与えるほうが良い」「もし、理解がずれていれば、気付いた時に指摘してくれるから、そのときにやり直せばいい」と、忖度しながら業務を進めることもあるだろう。
確かに、その瞬間は、「わかりました」と反応したほうが、気持ちもいいし、相手にも安心感を与えることができる。
しかし、こうした 「忖度」は集団のパフォーマンスを低下させる恐れがある。今回は「忖度」が引き起こす問題とその回避策を提起したい。
「忖度」が生産性低下を招く
「忖度」によって、相手の心中をおしはかることにはリスクがともなう。おしはかるとは、あくまでも推察の領域。上司と部下では、業務における経験・知識等が異なるため、上司のイメージと部下が推察する内容にはズレが生じる恐れがある。
部下は、上司の指示内容について「○○だろう」「○○かな」とおしはかって動いた結果、「そういうことじゃないよ」と上司に言われる。
これに対し、部下は「自分は、○○だと思っていました……」と言い訳をするが、上司からすると、「あいつは全然わかっていないな」となる――。