長時間労働と取れない有休、どう解消すればいい?
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両立支援制度はたくさんあるのになぜ
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●じつは「長時間労働の常態化」が原因だった!
IT企業には「男性が多い」「夜中まで働くブラック企業」というイメージがあるが、企業向けITサービスのSCSKは、働きやすい会社として数々の賞を受賞している異色の企業である。しかし、以前はほかの同業他社と同様の課題を抱えていた。同社を変えたのは、2013年から行っている、「スマートワーク・チャレンジ」という取り組みだ。きっかけは中井戸信英社長(現在は相談役)が「社員が疲弊していては、本来のクリエイティブな仕事ができない」と感じたことだったという。中井戸氏は長時間労働が常態化していることに着目。誰もが働きやすさを感じられる職場を目指したというわけである。
目標は「1カ月の平均残業時間を20時間未満におさめ、なおかつ年20日の有休を100%取得すること」。
「これまでも会社が残業の削減に取り組んだことはあります。でもいつも掛け声だけで終わっていました」と言うのは、入社12年目の藤岡有佐子さん(製造基盤インテグレーション部・第3課長)だ。ところがスマートワーク・チャレンジに取り組むなかで、会社の雰囲気が激変していった。定時を過ぎるとみんな先を争って帰るようになった。
「実は私の夫も同業者ですが、他社に勤めているので、『いったいどうやって残業を減らしたの?』とよく聞かれます(笑)」(藤岡さん)
SCSKが働き方改革に成功した第一の理由は、トップの本気を全社員に見えるカタチにしたからだ。毎週の役員会議では、部門ごとに役員が残業時間・有休取得の進捗状況を報告。中井戸氏からの叱咤激励は、会社のサイトで公開された。
さらに、「残業をすればするほど残業代が増える」という従来のしくみから、「残業を減らしても給料は減らない」と発想を転換。ゴールド、シルバー、ブロンズというように目標の達成度合いに応じてインセンティブとして全額社員に還元した。「残業代を減らすことが目的ではなく、社員の健康増進や業務の効率化が目的なのだから、残業代が減って浮いたお金は社員に還元しよう」というわけである。
人事グループ人事企画部ダイバーシティ推進課の酒井裕美さんは、「労働時間が短くなると、こなせる仕事の量も減り、利益が落ちることを心配する役員もいたようですが、会社トップが『一時的に下がってもいい』と言い切った。それで社員に『社長は本気だ』と伝わりました」と話す。