「子どもへの罪悪感が減った」
「元の生活にはもう戻れない」――そう話すのはリクルートホールディングスの平野愛子氏 。平野氏が丸の内にある本社ビルへ行くのは週2日ほど。残りは埼玉県大宮市にある同社のサテライトオフィスで働く。
「何より、ギュウギュウの電車に乗らなくていい、というのがうれしいです。それに、通勤にかかる1時間で洗濯機が回せるし、掃除機も掛けられる。かなり家事が楽になるんです」
平野氏の所属は内部監査室。以前は監査法人に勤めていたが、機密情報を扱うため自宅に仕事を持ち帰ることができず、深夜残業も多かった。2016年3月にリクルートへ転職し、働き方が一変したという。
「デメリット? 正直、ないですね。海外の関連企業と早朝や深夜に打ち合わせをすることもありますが、わざわざ会社に行かなくてもいい。スカイプを使って自宅やリモートオフィスで話をしていますね」
2歳の子どもを持つ同社広報部の栗崎恵実氏は、「罪悪感が減ったことが大きい」と話す。
「いつも子どもと一緒にいたいと思いながら働いています。でも、朝や夕方はどうしてもバタバタしてしまい、子どもに余裕をもって接することが難しい。リモートワークをするようになって時間のゆとりができたことで、心理的な負担が減りました」
平野氏と栗崎氏にはそれぞれ、自らすすんで制度を活用する男性上司がいる。
「私の上司はとてもイクメンで、夕方からの会議は、ほぼスカイプでやります。上司がずっと会社にいるタイプだと、制度を利用するのは難しいと思いますね」(平野氏)
「電話が鳴らないので集中できる」
「在宅勤務は生産性向上の効果がある」と話すのは、三菱東京UFJ銀行人事部企画グループ次長の佐伯哲哉氏。
「たとえば、在宅勤務では社外からの電話を取らなくてよくなります。ちょっとした雑務がなくなることで、集中して仕事ができるようになったという声も多くあがっています」