築20年で資産価値ゼロの商習慣の壁

共通ブランドや骨組み50年、内装15年の評価制度のほか、適正な査定に向けて住宅の査定から販売までを手掛ける独自の住宅販売士制度を設け、新築で激しい販売合戦を繰り広げるライバル同士が協力し、中古住宅市場の押し上げに努めてきた。協議会発足後9年を経て、共通ブランドでの累計成約数はわずか6790棟(16年12月末現在)にとどまる。

成約棟数は毎年増加しているとはいえ、協議会加盟10社が販売した戸建てのストックは全国に360万棟(16年9月末現在)あることを考えると、協議会の取り組みは広く浸透しておらず、良質な中古住宅市場を形成するに至っていない。協議会はリフォーム費用と一体化した中古住宅ローンを三井住友信託銀行と開発し、16年8月に提供を開始したほか、今年4月からは住宅保証機構(東京都港区)と開発した専用の瑕疵担保保険を仲介販売する住宅に無料で付与し、現状打破を図る。

一連の強化策などを通じ、協議会は16年度で前年度を約10%上回る1600棟の仲介を見込む。しかし、加盟10社が抱えるストックからは年間約1万4000棟が中古住宅として流通すると推定されており、仲介棟数は約11%にとどまり、補足率の引き上げが大きな課題となる。

国交省が導入する「安心R住宅」は消費者が信頼できる品質を国のお墨付きを与えるという点で、民間の取り組みをはるかに上回る広がりが期待できる。ただ、消費者が生涯で最も高い買い物となる住宅には「中古」のマイナスイメージは根強く、築20年を超えれば資産価値がゼロとなる商慣習の「壁」も切り崩さなければならない。

政府は今年3月に閣議決定した今後10年の住宅政策の方向性を定める住生活基本計画で、13年に約4兆円だった中古住宅市場規模を25年に8兆円に倍増する目標を掲げた。中古住宅のブランド化はその一環で、確かにイメージ向上には寄与するかもしれない。しかし、市場拡大が一筋縄でいかないことはこれまでの民間の取り組みをみても明らかだ。

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