女が男に「高い年収」を期待せざるを得ない理由
ちょっと前までは、私もこういう考えを持っていました。しかるに、結婚した女性がバリバリ稼ぐのは難しい現実があることを思うと、致し方ないのかなという気もします。図3は、正社員男女の平均年収を未婚者と既婚者で比べたグラフです。
男性では未婚者より既婚者の年収が高いのですが、女性はその逆です。女性の場合、正社員でも結婚すると稼ぐのが難しくなる。家事や育児などによる縛りが出るためでしょう。
しかし何といいますか、未婚者では収入にジェンダー差がほとんどないのが注目されます。差が大きいのは既婚者です。結婚がキャリアに与える影響が、男女でいかに違うかを思い知らされます。女性が結婚相手の男性に、相応の年収を期待せざるを得ないわけです。
女性の社会進出が進むと(男女の賃金が平等化すると)、女性が結婚をためらうようになり、未婚化・少子化が進展するという論がありますが、それはあべこべでしょう。ア)結婚すると女性のライフチャンスが制約される、イ)女性は結婚相手に高い年収を期待せざるを得ない、ウ)このご時世、そういう男性は滅多にいない、エ)故に未婚化が進む、というのが真相ではないでしょうか。
随所で言われていますが、男性の腕一本で一家を養える時代はとうに終わっています。夫婦の二馬力が求められる時代です。社会の側にしても、労働力人口が減る中、人口の半分を占める女性の労働力率を高めるのが急務。時代は変わっているのです。
図3の折れ線の男女差が、今後どれほど接近するか。未婚化(少子化)や労働力不足といった重要問題の解決可能性を見て取る、重要なバロメーターといえるでしょう。
(図版=舞田敏彦)