2004年、千葉県銚子市に設置された私立大学。設置者は学校法人加計学園。在学生は1638人(大学院含む、2010年5月1日現在)。学部は危機管理学部と薬学部の2つ。偏差値は44~45。危機管理学部には文系理系を合わせて4学科がある。系列大学に岡山理科大学、倉敷芸術科学大学がある。
紺色の制服に身を包んだ2人の学生が、緊張した表情を浮かべている。遠くから「放水開始」の合図。すると手元の消防ホースから勢いよく水が飛び出した――。
千葉科学大学(千葉県銚子市)の「学生消防隊」による放水訓練の様子だ。
このときの送水圧は4キロ。1人が先端を標的に向け、もう1人がホースを支えていた。訓練では7キロまで扱ったことがあるという。2人の息が合わなければ制御できない水圧だ。この日も見事な連携を見せてくれた。
千葉科学大は2004年新設の若い大学で、学部は薬学部と危機管理学部の2つ。危機管理学部には警察官や消防官を志望する学生も多く集まる。
学生消防隊の発足は開学翌年の05年。銚子市消防団から老朽化した消防車2台の無償貸与を受けられることになり、有志の学生たちが立ち上げた。
学生消防隊は消防官志望の学生による勉強サークルでもなければ、ボランティア組織でもない。銚子市消防団に準じる消防組織である。
現在の隊員は35人。07年には大学、銚子市消防団、学生消防隊の3者が「地域防災強化に関する覚書」を締結。市の正規防災組織に準じるようになった。隊員の意識も高く、35人中5人は銚子市消防団のスタッフとしても活動する。
もちろん、いくら正規組織に準じる存在といっても実際の火災現場で消火活動を行うわけではない。消防車にはナンバープレートがついておらず、学内で使う教育材料にすぎない。
しかし、活動は本格的だ。年初には銚子市消防出初式に参加。2009年、台風11号の接近時には地元テレビ局と協力し、被害情報の収集なども行った。
充実した活動を支えるのが、消防関連のOBでもある監督と顧問の存在だ。監督で危機管理システム学科シニアフェローの室井房治さんは、長く銚子市消防団で団長を務めた。また顧問で医療危機管理学科准教授の櫻井嘉信さんは、2010年3月までは千葉市消防局の消防司令。いつでも専門家の指導を受けられるのだ。
取材日も、学生たちは夏休みにもかかわらず、翌日の防災訓練に向けて練習に励んでいた。室井監督はいう。
「訓練日にはみなきちんと集まる。学生はなかなか意欲的に取り組んでいます」
進路にもいい影響が出ている。これまでの卒業生は、1期生から3期生までの全員が、消防官、警察官、海上保安庁などの公安関連の職種に就職している。顧問の櫻井准教授はいう。
「(公安職を)給料が高いから受けてみたという学生はたくさんいます。そうした学生は大体落ちる。その点、学生消防隊や本学の学生は気構えが違います」