「完璧主義」も長時間労働の一因に

欧米では一人一人の仕事内容が限定されていますが、日本では明確に決められていません。

【長時間労働を生み出す要因分析】長時間働いている人が上司から高く評価されたり、残業代が支払われる仕組み、繁忙期も人を増やさずにすでにいる社員の労働時間で調整しようとする労働慣行が、有給取得を遠ざけ、残業を増やし、結果的に長時間労働を生み出している。出所)筒井淳也教授作成

たとえば人事部から営業部に異動するなど、どんな仕事をすることになるかわからないので、専門性よりも幅広い対応力が求められます。ひとつのタスクを複数の人で分担することも多く、「自分の仕事はここまで」と線引きしにくいのです。

また、仕事内容が明確でないために、労働時間も評価の対象になります。残業したほうが上司の覚えがよく、残業した分だけ収入が増えるという環境では、社員はむしろ積極的に残業してしまうのです。

もうひとつ、日本の完璧主義の影響もあります。

日本企業は顧客満足度100%を目指しますが、ヨーロッパでは費用対効果の観点からそれはしません。あえて90%までしか対応しない方針を作り、残り10%をクレーマーとみなして切り捨てるのです。その10%のために日本人は多くの労働時間を割いているともいえます。