可能性を信じて海外で就職……ではなく起業してしまう。そんな女性が昨今少なくありません。タイ・チェンマイでオーガニックコットンの高級寝具メーカーを経営する嶋田美由紀さんもその1人。20代で日本を飛び出し、起業した経緯から事業を軌道に乗せるまでの話を、在タイ歴15年になる嶋田さんに聞きました。

メイド・イン・タイの高品質手織り寝具

「プラネッタ・オーガニカ」の代表、嶋田美由紀さん。20代でタイにわたり、現地に根ざした社会的起業でタイの伝統産業に寄与している。

ヨーロッパのどこか。できれば北欧でインテリアや家具、ガラス工芸の仕事をしてみたい――そんな夢を持ちながら、気が付けばタイに根付き、オーガニックコットンのブランドを立ち上げて成功に導いた人物がいる。タイのチェンマイに本社を置く「プラネッタ・オーガニカ」の代表、嶋田美由紀さんだ。

タイで栽培される無農薬や低農薬の厳選したコットンやヘンプを材料に、紡ぎや手織り、草木染めといった伝統的な手法を駆使し、現地の職人が手仕事で作りあげる寝具や部屋着、タオル。丁寧な工程を経て生み出されるプラネッタ・オーガニカの製品は、タイの一流ホテルやスパで使用され、日本のセレクトショップでも販売されている。

本拠地のチェンマイの他、バンコクにも直営店を開き、その品質の良さは日本人の駐在員家族やタイ人の富裕層にも好評だ。タイにおけるオーガニックコットンブランドのパイオニアであり、リーダー的存在といってもいいだろう。

アジアで働く女性の多くは、最初からその地域に親近感や親和性を感じ、日本から飛び出してくるケースが多いが、嶋田さんは違った。タイでの事業に携わるまで、タイにもアジアにも興味はゼロ。むしろ、好きな方ではなかったらしい。そんな嶋田さんとタイとの接点は、ひょんな形で訪れた。

タイ・チェンマイにある「プラネッタ・オーガニカ」の直営店。商品の品揃えはシーツ類を中心に、着心地のよい室内着など少しずつ増えてきている。