高給の理由も決算情報から読み解ける!

筆者が思うに、利益率が低いにもかかわらずテレビ局員が高給取りなのには3つの理由があります。

【1. テレビ局にそれだけの高給を支払う能力があるため】

通常の場合、当期純利益率3%前後の会社で働く社員の平均年収は400万円~500万円台であることが多いです。もし平均年収を1300万円にしたらおそらく当期純利益率は1%未満か赤字に陥ってしまいます。ところがテレビ局は高額な人件費を負担した上での純利益率が3%です。もし年収を500万円台に下げれば利益率は上昇します。ただ後述しますが、テレビ局で働く正社員の数は規模の割には少ないので、たとえ平均年収を500万円に下げたとしても筆者の計算では純利益率は2%程度のアップに過ぎません。平均より少し高くなりますが、高利益率というほどではありません。

【2. 社員の1人あたりの売上高が多いため】

1つ目の理由とも関係してきますが、業界最大手のフジテレビを例にしましょう。会社がホールディングス化する前の決算情報を見ればフジテレビ単体の業績がよく分かります。フジテレビジョンの2008年3月期の有価証券報告書によれば、同期における従業員数は1431名、平均年齢は39才、平均年収は1534万円となっています。

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フジテレビ 売上高の分配。最も多くを占めるのは、原価及び販管費に計上されている業務委託費の21%。いかに社外のリソースが多く使われているかが分かる。

かなりの高給取りですが、その期の売上高が3829億円なので、1人あたりの売上高を計算すると2億6757万円と多額です。世間では年収の3倍の売上高を上げればいいと言われている中、1人で2億6千万円以上もの売上を計上していると思えば年収1534万円はむしろ安いとも言えます。

ただそれには裏があり、フジテレビは事業を1431名の社員だけで回せるはずもなく、業務の多くを下請け会社に委託しています。総勢で何名関わっているかは分かりませんが、かなりの人数だと推測できます。その証拠に、フジテレビのコストの中で最も高いのが制作会社などへの業務委託費です。2008年3月期の損益計算書をもとに営業利益までの売上高の配分表を作成してみましたが、原価及び販管費に計上されている業務委託費は売上高の21%を占めています。その次が代理店手数料の15%。福利法定費などを含めた社員などの人件費は11%にとどまっています。