英語とピアノの共通点とは

具体的に何をどうやればいいかは、後述の「学習プログラムマップ」にある通り。TOEIC対策用の教材を用いるが、使い方は文法でも長文読解でもリスニングでも同じだ。

まずは、文構造や知らない単語を調べ完璧に読解、そしてひたすら音読だ。リピーティング、サイト・トランスレーション、リード・アンド・ルックアップ、音読筆写、オーバーラッピング、シャドーイング、加速トレーニング、ショート・プレゼンテーション……なんと音読のバリエーションだけで8種類もある。

「ときどき“こんなにやらなくちゃいけないんですか!”と驚かれるのですが、これくらいやらないとだめなんです。言語を使いこなすとき、文法がどうだ構文がどうだと考えていませんね。必要なフレーズが自動的に、反射神経で出てきます。それには、口と耳を使って訓練する。英語は勉強じゃない、訓練です」

外国語の学習はピアノのレッスンに似ている、と安河内哲也先生。最初に楽譜や指の運びといったルールを覚え、パートごとに先生の後について弾き、ゆっくり弾き、スピードを速めて弾き、感情を込めて弾き、ようやく自分のレパートリーになる。けれど、そうして覚えた曲は生涯忘れず、次の曲はもっと早く上手に弾けるようになる。

「英語は、机に座ってマークシートを塗るような訓練では上達しません。最低でも50%以上、できれば80%は耳と口を使った訓練に充ててください。静かな図書館や学習室では、英語ができるようにはなりません。それは、どんなに真剣に楽譜を読んでも、楽曲を聴いても、演奏できるようにならないのと同じです」

そうしてテスト間近になったら、満を持して『TOEIC新公式問題集』に取りかかる。最初は本番と同じように、きっかり2時間で終わらせること。さらに、答え合わせをしてお仕舞いにせず、3回でも4回でも繰り返す。何度もやると答えを覚えてしまうかもしれないが、構わない。特にリスニングは何回目かでも満点が取れれば、聴こえなかったところが聴こえるようになった証拠だ。

「少々キツイ学習法を提案したかもしれませんが、語学の習得には必要な過程です。その代わり、このやり方を実践してもらえれば“700点の壁”なんて軽々と超えられますし、満点だって狙えます。大切なのは、すぐ始めること。躊躇している時間は、もったいないですよ!」