点数は伸びやすいが焦りは禁物

企業から「一定期間で社員のTOEICレベルを引き上げてほしい」といった依頼を受ける箱田先生。教わる社員は英語レベルもモチベーションもまちまちだが、特に500点台には英語に興味を持って取り組み始めた人と、あまり乗り気になれない人が混在するという。

「両者に共通する特徴は、テスト対策をやりたがる人が多いということでしょうか。早く結果が欲しいからか、とにかく近道をされたがるんです。例えば、例文を見せ“声に出して言ってみましょう”と言っても“TOEICにスピーキングはないので必要ありません”と言われてしまうんです」

ところが、多くの人が行きたがる近道が、実はぜんぜん近道になっていないというのはよくある話。それどころか、かえって遠回りになっていることすらあるという。

「声に出す練習は、リスニング対策でもあるのです。よく日本人はLとRの区別ができないと言われます。微妙な発音を聴き分けるには、ちょっとしたコツが要るのです。それは、どんなに言葉で説明されてもわからない。自分で発音してみることで、気がつくことが多いんです」

箱田勝良先生が受け持つ受講生の多くは大学受験の経験があり、文法や読解の基礎はそれなりに備わっている。忘れているだけなら、一通りやり直せば思い出す。ところが、リスニングについてはきちんと教わったことがないという人が、圧倒的に多い。だがそれは“音に慣れるトレーニング”をやれば、一気に得点アップを狙えるということでもある。

「上級レベルになるほど上積みは難しくなりますし、下のレベルになると基礎固めからやるので時間がかかる。手持ちの知識を訓練で使えるようにしていける500点台の人こそ、いちばん伸びやすいのです。それだけに、焦ってほしくはないですね」

リスニング対策なら、TOEIC用問題集のリスニング・パートを集中的にやるのが手っ取り早いと思いがちだが、そう単純でもないようだ。

「問題集は実際の出題形式に準じているので、時間配分の感覚を掴むにはいいのですが“ココを集中的に身に付けたい”という課題を持ったトレーニングには不向きです。解説もあまり掘り下げられたものではないので、ややもすると問題をこなしたという自己満足だけで終わってしまいがちです」